神奈核ニュース No.2(1996.9) 目次


三本先生退官記念パーティ開催される神奈川県立
 循環器呼吸器病センター
大島 正行
代表幹事から会員の皆様へ代表幹事
  横浜労災病院
渡辺 浩
第187回定例研究会
三本先生退官記念講演
  ミオ-MIBGを用いた心疾患の診断
元日本鋼管病院三本 重治
第184回定例研究会
 放射線従事者の教育訓練
放射線障害防止に関する法令T
  放射線管理の実践
川崎市立井田病院長谷川 武
第184回定例研究会
 放射線従事者の教育訓練
放射線障害防止に関する法令T
  核医学における記帳について
神奈川県立がんセンター藤生 英夫
第184回定例研究会
 放射線従事者の教育訓練
放射線の人体に与える影響
  核医学従事者の被ばくについて
神奈川県立厚木病院中村 豊
第184回定例研究会
 放射線従事者の教育訓練
RIの安全取り扱いについて
  放射線技師の放射性医薬品に
    対する施設内取り扱いについて
川崎市立川崎病院奥山 康男
核医学オーダリングシステムを考える
  核医学検査オーダーの作成経験から
横浜市立大学附属病院
  医事課
深谷 隆司
核医学オーダリングシステムを考える
  作る立場(RISメーカー)から
(株)東芝
  医用機器事業部
内山 章
核医学オーダリングシステムを考える
  当院の核医学オーダーシステムについて
北里大学東病院原 信康
私のパソコン活用術(1)
  私がWindows3.1を選択した本当のわけ…
東海大学
  核医学診療科
福井 浩
編集後記東海大学病院
  核医学
村上 剛


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三本先生退官記念パーティ開催される
ペンネーム 万馬券を当てたい男
 神奈川県立循環器呼吸器病センター
大島 正行


 7月12日(金)に神奈川核医学研究会納涼会&三本先生(横浜市民病院)退官講演,記念パーティーが,横浜駅東口プラザホテルにてPM6:30より行われました。まず,警友病院の金谷氏の司会により,三本先生の退官記念講演からスタート。201Tlと123I-MIBGデュアルスペクトによる心筋の評価をPTCA前,後の症例提示により,わかりやすく講演していただきました。また,その時の問題点であるクロストークについてもアドバイスしていただき,たいへんためになる講演だったと思います。(三本先生,本当に有り難うございました。)頭の中が,201Tlと123I-MIBGでいっぱいになった所で,今度は,のどを潤し,お腹もいっぱいにする番となります。部屋を移り,神奈川核医学研究会納涼会&三本先生退官記念パーティーのスタートです。県立循環器呼吸器病センターの大島氏の迷司会?により始まり,事務局である横浜労災病院の渡辺氏より挨拶の後,三本先生に日本鋼管病院の松枝さんと米沢さんより花束の贈呈が行われました。恒例のごとく,県立がんセンターの小野先生の乾杯により納涼会が本格的に始まりました。あちら,こちらで楽しい話,難しい話などなど聞かれ,納涼会&三本先生退官記念パーティーは,盛り上がっていくのでありました。のどもある程度潤い,お腹も落ちついたところで,北里大学病院の石井先生,日本鋼管水江診療所所長の綱島先生,元日本鋼管病院の増岡先生から三本先生にまつわるなつかしい話をうかがった後,神奈川核医学研究会を代表して,川崎市立井田病院の長谷川先生より三本先生へ記念品(旅行券だそうです)の贈呈がありました。最後にもう一度,日本鋼管病院の竹内さんから三本先生に花束が贈られ,東海大学病院 福田先生の気合いの入った一本じめで,この楽しい会もフィナーレとなり(福田先生,突然の御指名すみませんでした),それぞれ横浜のまぶしいネオンの中へ消えていきました・・・・。総数60数名,幹事の皆さん,ご協力いただいたメーカーの皆さん本当にご苦労さまでした。(有り難うございました。)今年は,12月に宿泊で忘年会もございますので,また,ご協力のほどよろしくお願い致します。以上,神奈川核医学研究会納涼会&三本先生退官講演,記念パーティーの報告を終了致します。パチ,パチ,パチ!!!!



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代表幹事から会員の皆様へ
代表幹事
(横浜労災病院)
渡辺 浩


 奥山氏(川崎市立川崎病院)から本研究会の代表幹事をを引き継ぎましてから、早くも2年目を迎えることができました。これも会員の皆様のご支援とご協力によるもの感謝しております。
 さて、編集担当幹事である村上氏(東海大学病院)のご尽力により、経費が殆ど掛かっていないにもかかわらず、このような立派な機関誌が発行できるようになりました。毎回貴重な講演をお願いしておりますが、年に数回このような形でまとめることが出来れば、研究会で聞き逃したことを確認することも出来ますし、都合がつかず聞けなかった会員の皆様にも、講演内容を伝えることが出来ると考えております。また、講演要旨のみならず会員の皆様の交流の場としても活用していきたいと考えております。
 神奈核の定例研究会は、皆様もご存じの通り年10回、平日を中心に開催しておりますが、お忙しい中をお集り頂いている会員の皆様に、がっかりさせないようなテーマを毎回用意すべく、幹事一同努力してまいりました。その甲斐あってか、今年4月に実施しました放射線業務(診療)従事者の教育訓練と題した研究会には、62方がご参加頂きました。医療法としての規制は有りませんが、安全な放射線業務を行っていくために、教育訓練が必要なことは各施設でも十分認識されていることとと思います。しかし、現実問題として各施設単独で教育訓練を実施することは非常に困難です。そういう施設の方々の放射線管理の一助となればと企画した次第ですが、予想以上の出席者であったことは、会員の皆様の放射線管理への積極性を示すものと敬服する次第です。今後も皆様の期待に答えられるテーマを企画したいと考えておりますので、今まで以上に積極的に参加して頂きたいと思います。また、神奈核の特徴でもあります"症例検討会"を例年通り数多く企画して行きたいと考えております。もし、今後の神奈核の活動について、ご希望やご意見がありましたら、遠慮無く事務局か又は最寄りの幹事にご連絡下さい。



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第187回定例研究会
  三本先生退官記念講演
ミオ-MIBGを用いた心疾患の診断

(元日本鋼管病院)
三本 重治


【スライド1】
 本日のテーマは、《ミオ-MIBGを用いた心疾患の診断》と言う事で私にとっては、《大変大きな・難しいテーマ》でありまして到底、結論を導く事は出来ませんが、しかし、当院での症例を呈示し、話を進めたいと思っております。本日、お集まりの先生方に後程、ご意見を頂ければ幸いに思っております。
 始めに、少しの時間をいただきまして、当院アイソトープ検査室の歴史について簡単に紹介をさせて頂きたいと思います。

【スライド2】
 当院RIの歴史は古く、昭和43年に始まり、約25年を越える歴史を持っています。当時は、シンチレーション・スキャナでした。甲状腺・肝臓程度が当時の検査項目でした。
 昭和53年、アナログ・ガンマーカメラLFOVに更新されました。
 昭和62年、病院の1期再整備に伴い島津のデジタルガンマーカメラの第2号機SNC-500Rが導入されました。
 平成4年、637床に再整備された時、SNC-5100Rが設置され、現在2台のカメラがフル稼働しています。
 平成3年度実績で、3024人/240日(実働日数)12.6人/日、現在もほぼ同数の件数であります。スタッフ、医師-1名、技師-2名、看護婦・受付はおりません。

【スライド3】
 SNC-5100Rでございます。

【スライド4】
 日本語、マルチ・ウインドでございます。

【スライド5】
 本日はTlとミオMIBGの2核種を用いた心筋の話でありますので、その時発生するクロス・トークについて、当院で行っているクロス・トークの除去法について少し触れてみたいと思います。
 スライドは、一般に言われている2核種同時収集の利点・欠点を示したものですが、クロストークをいかに除去するかが、心筋を正しく評価できることと考えております。

【スライド6】
 はじめに、ミオ-MIBG 111MBq(3mCi)を静注し、2時間後に真のMIBG画像を収集します。この時、TlとI-123のエネルギーである76,159KeVを設定し、真のMIBG画像を収集すると同時にI-123からTlへこぼれ落ちる散乱画像を同時収集します。
 スライドは、その時に得られた真のMIBG画像であります。

【スライド7】
 真のMIBG画像収集後、Tl 74MBq(2mCi)を静注し、10分後から先と同じエネルギー条件でMIBGとTlのDual・SPECTを施行します。
 スライドは、その時得られたCross・Talkを含むMIBG画像でありますが先程の真のMIBG画像と比べて、LAD領域にCross・Talkによる過大評価される部分が観察されます。

【スライド8】
 スライドは、TlとI-123のエネルギー状態を模式図として示したものです。MIBGが過大評価された大きな要因として、Tlの第2ピーク 167KeVがI-123のエネルギーピークに接近していることが上げられます。

【スライド9】
 このようにして私達は、2回のSPECTで得られた4つの画像をそれぞれ減算することで、真のTl画像をつくりだします。スライドは、減算により得られた真のTl画像であります。
 収集方法は、シングルヘッド・ガンマカメラを用いて、1step30秒で180度方向からの32Stepです。これからの臨床報告は、このようにして得られた真のTl・真のMIBG画像から評価を加えたものでございます。
 本題に入りたいと思います。

【スライド10】
 近年PTCA・DCA等が盛んに行われるようになり虚血性心疾患の治療にはめざましいものがあります。しかしながら、PTCA・DCAの心筋に対する直接的な障害に関しての報告はありません。私達は、心筋交感神経機能を反映するミオ-MIBGを用いてTlとのDual SPECTを経時的に施行し心筋への障害を観察し、また再狭窄との関連についても検討した。
 対象と方法 対象は狭心症8例、梗塞後狭心症7例、男8例、女4例の計12例で年齢は、52±16歳でした。狭心症例は、全例Treadmillによるwork capacityは、5METS未満でした。梗塞後狭心症例は自然再開通または、PTCRにより再開通し、左心造影、負荷Tlにより残存心筋を有する症例としました。

【スライド11】
 プロトコール 原則としてPTCA施行前、PTCA施行後1週、4週、12週にTlとMIBGによる2核種同時SPECTを施行しました。
 経時的欠損像の変化は視覚判定により行いましたが症例数に限りがあるため統計的検討は行っておりません。PTCAは全例で90%より25%以下に改善し、全閉塞時間は、4.5〜10分で平均6.6分でした。また、3ヶ月後には確認冠動脈造影を施行しました。

【スライド12】
 結果の1、不安定狭心症例のMIBGの変化について
 不安定狭心症例5例で、PTCA前、PTCA後4週以降のMIBG像を検討した。PTCA前に全例で、MIBGの取り込み低下が見られた。5例中4例で4週以降のMIBG像の取り込みの改善が見られた。
 スライドは、改善例でLAD-セグメント7に90%狭窄を呈した不安定狭心症の短軸像ですが、上段Tl像、下段がMIBG像です。左がPTCA前、右が4週間後です。MIBG像では、PTCA前に前壁中隔領域の一部が欠損しているが、4W後には改善しているのが観察されました。
 以上より高度冠動脈狭窄病変では、MIBGの欠損をきたすと考えられました。

【スライド13】
 結果の2、PTCA直後のMIBGの変化について
 PTCA後1週以内の早期SPECTの変化を検討した。6例中4例でPTCA後にMIBGの取り込み低下が見られた。取り込み低下の変化が小さかった症例は、2例共に冠動脈病変が99%造影遅延で側副血行路が発達していた。
 スライドは、LAD-セグメント7の病変のPTCA前後の変化です。上段Tl像、下段がMIBG像です。左がPTCA前、右が1週間後です。PTCA前とくらべ1週間後でのTlでは、前壁の取り込み低下が認められます。MIBGは、前壁から中隔にかけて欠損が広がっているのが分かります。4週間後には、Tl・MIBGともに改善しました。
 以上より、PTCAによる短時間虚血によりMIBGの取り込みが低下すると考えられた。また、Tl像でも取り込み低下の可能性が示唆されました。

【スライド14】
 結果の3、MIBGの変化と再狭窄との関連について
 PTCA前または直後とPTCA3週間後とのMIBG像の変化について検討した。PTCA4週間後には9例中6例でMIBGの取り込みが改善した。非改善3例中2例は、3ヶ月以内に再狭窄を呈し、1例はPTCA直後にもMIBGの取り込み低下が見られなかった。
 スライドは、狭心症の非改善例で再狭窄を呈したものです。右側はPTCA3週間後ですがTlでは前壁の取り込みに改善がみられますが断層像では心尖部に低下がみられます。MIBGでも前壁は改善しているようですが、心尖部では明らかな改善なく、逆に欠損部の広がりがみられました。この症例では、その後の冠動脈造影にて再狭窄が確認されました。

【スライド15】
 結語
1.不安定狭心症例、PTCA 1週間後の症例では、交感神経障害が認められた。
2.この障害は、PTCA後4から8週で改善した。
3.PTCA 4週後のMIBGの取り込み非改善例では、再狭窄が確認され早期再狭窄の指標として有用であった。
 以上でありますが本日は、第187回神奈川核医学研究会の貴重なお時間を頂き、まとまりの無い話となってしまい申し訳なく思っております。40年に渡り、アイソトープの仕事を続けて参り、数多くの人を知り、そして私を支援下さったことが今、大変うれしく思っております。特に、神奈川核医学研究会の皆様には、大変お世話になりましたが、私から何もして上げることが出来ず、こころ苦しく思っている次第でございます。神奈川核医学研究会の今後益々のご発展と皆様方のご健勝を祈念する次第でございます。ありがとうございました。



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第184回定例研究会
 放射線従事者の教育訓練
  放射線障害防止に関する法令T
放射線管理の実践

川崎市立井田病院
長谷川 武


1.はじめに
 放射線管理の目的は職業被曝・医療被曝・公衆被曝を問わず、放射線利用に伴う放射線障害の発生を未然に防止することにある。その基準と原則には@ICRP勧告・関係国内法からなる管理 A事業所が国内法などに合わせて作成した管理 B作業毎に詳細に管理基準を定める管理方式の3つの方式があるが、端的に言うと放射線管理の基本は「記録すること」でしょう。この事を実行するには、知識を集合させ、決め事を厳正粛々と実行する事になりますが、それは融通の無い管理が必要でもあり交通取締の女性警察官のように、「決められた事は、きちんとやりなさい」という、職務専念の精神が必要なのです。
 基礎講演の内容は、次のようなものでした。

2.基礎講演の内容
 次の6項目について、その概要をA4版の23ペ−ジ程の資料を基にして述べた。
@医療用放射線に関する管轄法令
 放射性同位元素の医療放射線法規について、医療における患者さんの放射線に対する安全確保と医療の場における職員の放射線に対する安全確保のまとめ、および放射線使用に必要な緒手続きについて
A放射線管理の基礎知識
 次の4つの項目にわけて述べた。
 放射線管理業務としての重要度・管理者の義務と取り扱い者の義務・放射線業務従事者の放射線防護・放射線障害予防規定と細則の作成について
B放射線管理の実際
 核医学検査に関する放射線管理は、放射性医薬品をもちいた検査で施設内外の放射線レベルが基準以下に維持することで、従事者と一般公衆が不必要な放射線被曝をしないようにすることである。
 関係法令は医療法施行規則・電離放射線防止規則・消防法などが主体である。
 その内容は、施設設備の管理・RIとRI汚染物の管理・環境管理・個人管理・事故対策が実務における管理である。
C放射線安全管理状況点検の要点
 放射線安全管理において定期的な安全管理状況点検が必要である。放射性同位元素等における放射線障害の防止に関する法律では施設の定期点検が義務化されている。
 点検の要点は、使用する放射性同位元素等・放射線障害予防規定・放射線取扱主任者施設設備・取り扱い行為・測定・教育訓練・健康診断・譲渡譲受および所持の制限・危険時の措置について概要をおさらいした。
D放射線施設の立ち入り検査
 医療監視におけるチェックポイントを医療監視時の監視表を基におさらいし、管理実務の即効薬として認識した。
E核医学放射線管理の充実について
 「医療法と放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律」におけるいわゆる二重規制について、規制の合理化が求められており、放射線利用技術の進歩や国際情勢に対応するため、放射線管理の充実が求められている。

 医療放射線管理の充実に関する検討会報告書の概要をつぎにまとめた。
(1)放射線施設管理について
目的
 自発的制度の確立にて、核医学施設における放射線管理の充実を図る。
 1)自主点検による施設基準適合の充実
   医療法施行規則による施設基準適合の厳守徹底を図る。
 2)放射線障害予防規定制度の確立
   核医学業務における安全管理マニュアルの作成。
 3)放射性物質取扱管理者制度の確立
   取扱管理者機能の存在による管理の充実を図る。
 4)教育訓練制度の確立
   業務従事者に対する教育及び訓練の実施。
 5)放射線測定機器の定期点検制度の確立
   機器管理の点検整備及び校正による精度管理。
 6)報告制度の確立
   放射線管理状況の報告制度による管理効果。

(2)放射線障害防止法と同等の安全性を確保するための具体的な事項
目的
 医療法において、放射線障害防止法と同等の安全性を確保するための諸規定を整備する。
 1)公的管理体制の充実のため、診療放射線技師が許認可事務及び検査等を担うこと等、特に技術面のレベルアップが必要。
 2)施設検査及び定期検査等についても検討が必要。
 3)制度化の必要はないが、施設の特性に応じた教育・訓練を実施すべきである。
 4)個々の医療機関ごとに具体的な放射線障害予防に関する諸規定の作成を義務付けることが適当である。
 5)放射線障害防止のための責任者を医師・歯科医師又は放射線障害防止法の放射線取扱主任者の資格を有する者から選任することが必要。
 6)医療機関内の輸送管理の充実が必要。
 7)施設内の安全対策管理体制の充実に関する検討が必要。

(3)放射線管理の充実に関する事項
 1)廃棄方法の拡大
 2)非密封放射性同位元素の取り扱い基準について
 3)サイクロトロンの複数医療機関での共同利用について
 以上について、放射線業務従事者のための教育訓練として、その概要を講演した。



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第184回定例研究会
 放射線従事者の教育訓練
  放射線障害防止に関する法令T
核医学における記帳について

神奈川県立がんセンター
藤生 英夫


 核医学施設において、取り扱う放射性物質の種類、量、使用目的などによって規制を受ける法令が異なっており、殆どの施設は医療法の許可のもとに放射性物質(照射装置等は除く)を取扱っており、一部の施設が放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律(障防法)の対象となっているのが現状である。それぞれの法の主旨とする目的は医療法は医療を提供する体制の確保、国民の健康保持に寄与する施設の計画的な整備、人的構成、構造設備、管理体制等、良質かつ適切な医療提供の理念と担い手の責務を規定している。いっぽう、障防法は作業従事者及び一般国民を放射線障害の発生から守り、公共の安全を確保し、RI等の利用の円滑な推進をはかることである。さらに、主な関係法令として、薬事法(放射性医薬品の製造及び取り扱い規則)、運送法(放射性同位元素等車両運搬規則)、航空法労働安全衛生法(電離放射線障害防止規則、作業環境測定法)、国家公務員法(人事院規則)、船員法(船員電離放射線障害防止規則)などがあり、その他に法律15、政令5、規則22、告示26、があらゆる面で種々の防止策や安全面の規制に絡んでいる。法律があらゆる事例に対して、全て網羅が可能ではないので、法令だけでは十分でないこと多くあり、そこで行政機関が一定の行政目的の達成のために、行政指導を行う事がある。
 法令で、放射性同位元素の使用から廃棄までを正確に帳簿に記載しなければならない記帳義務が定められている。

記帳の目的は?
 記帳・記録によりRIの移動過程、所在、取扱状況などを正確に把握し、作業(被曝管理も含めて)、災害、事故時の安全を図る。【各種の情報源となる】
記帳は誰が行うか?
 @放射線管理担当者A放射線取扱者自身が行うものがあり、記帳者を明確にしておく事が大切である。
記帳の時期は?
 その事象のたびに行わなければなりません。
帳簿の保管期間は?
 帳簿は1年ごとに閉鎖し、5年間保管するなどとなっている。
 以上が記帳に関する主要点で、その細項目等については記帳の義務者の対象が病院の使用者にここでは限定されるので、障防法、医療法、労働安全衛生法による事項及び根拠法令を示す。

障防法での記帳の義務(法第25条)
 使用者(放射線発生装置、照射装置などの使用者は除き核医学関連のみ)が備えるべき帳簿に記載しなければならない事項の細目(総理府令:規則第24条第1項)
 1)放射性同位元素の使用に関する事項
 2)   〃   の保管に関する事項
 3)   〃   の運搬に関する事項
 4)   〃   の廃棄に関する事項
 5)   〃   の施設点検に関する事項
 6)   〃   の教育訓練に関する事項

 帳簿は1年ごとに閉鎖(規則第24条第2項)閉鎖後5年間保管(規則第24条第3項)
 罰則規定 1)備えず 2)記載せず 3)虚偽の記載 4)保存しない 20万円以下の罰金(法第55条、57条)
 記録の作成 
 測定に関して
 1)場所及び被曝線量の測定(法第20条第1、2項)
 2)場所の測定結果は測定のつど記録、5年保存(規則第20条第4項第1号)
 3)外部被曝の測定結果は集計のつど記録、永久保存(規則第20条第4項第2号)指定機関あり
 4)内部被曝の測定結果は測定のつど記録、永久保存(規則第20条第4項第3号)指定機関あり
 5)汚染状況の測定は判定方法も含め記録、永久保存(規則第20条第4項第4号)指定機関あり
 健康診断(法第23条第1、2項)
 健康診断のつど記録、永久保存(規則第22条第1、2、3項)指定機関あり(告示13号)

医療法での記帳の義務(病院又は診療所の管理者)
 管理者(核医学関連のみを対象として)が備えるべき帳簿に記載しなければならない事項の細目(規則第30条の23第2項)
 1)診療用放射性同位元素の入手、使用又は廃棄の年月日
 2)    〃    の入手、使用又は廃棄に係る種類及び数量(ベクレル単位)
 3)    〃    の使用者の氏名、廃棄に従事した者の氏名
 4)    〃    の廃棄の方法、場所
 帳簿は1年ごとに閉鎖、閉鎖後5年間保存
 罰則規定 無し
 記録の作成
 測定に関して
 1)放射線障害が発生するおそれのある場所の測定(規則第30条の22)
 2)場所の測定結果は測定(1回/6月、排水・排気のつど)記録、5年保存(規則第30条の22第1項)
 3)外部・内部被曝の測定結果は集計、記録、保存(電離則第9条第2項)
 4)汚染状況の測定(1回/月)記録、5年保存(規則第30条の22)
 健康診断(無し・・電離放射線障害防止規則第56条、人事院規則10-5)
 健康診断のつど記録、5年間保存(電離放射線健康診断個人票を作成、報告書の作成、電離則第57条)

作業環境測定(労働安全衛生法第65条)
 外部放射線による線量率(電離則第53条)測定の記録
 1)日時 2)方法 3)測定器の種類、型式及び性能 4)測定箇所(周囲状況も含む図面添付) 5)指示値及び測定条件(バックグランド値、校正定数、作業の種類、状態など) 6)結果(対象放射線の種類及び線量当量率) 7)測定を実施した者の氏名
その他、(教育訓練)(施設検査)(定期検査)修繕工事、事故、各種申請、組織改定、変更許可等の時系列の記録 但し()は医療法に規定は無い
 参考記入項目として、検査・患者の情報台帳、管理区域立ち入り者記録、薬品の譲渡及び譲受記録、測定器の点検及び校正記録、薬品注文(キットも含む)の申し込みから受け入れ、保管、廃棄までが、一連としての記載や事故、地震・災害時等記録が整理されれば良いでしょう。
 その他に最近では、各種システムが電子情報としてやり取りされておりその保存方法も電子保存は可能であるが、現状ではまだ許可されてはおらず紙への打出し、署名等が必要である。

 以上、関係法令に準じて記帳(記録)項目、注意点などについて述べましたが、法にうたっている記載事項などは必要最低限の事で、様式などが法で定めていないのは各病院などの特殊性を考慮してのことで、実情にあった対応(関連法との整合性を保持し)が望ましい。
 事故、危険時、地震・災害時には特に経時的かつ詳細な記録が要求され、災害時の記録は汚染の範囲や被曝線量の推計などのことを考慮すると永久保存がよい。
 最後に、これからはコンピ−タ管理が増えてくるので、新たに記帳簿を作るに際し、種々の事を考慮するとどうしても項目数が増加しがちであるが、記帳し易く、分かり易く、検索等がし易く、将来にもわたって長期間続くものを各病院で作っていただき、これがあれば便利だよ!と言うものがあればまたこの研究会の場で皆様に公表していただければ幸いです。



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第184回定例研究会
 放射線従事者の教育訓練
  放射線の人体に与える影響
核医学従事者の被ばくについて

神奈川県立厚木病院
中村 豊


1、放射線被ばくによる人体への影響
 放射線被ばくによる人体の健康に対する影響は過去の貴重な経験や悲しい事柄、つまり広島・長崎の原爆被爆者や放射線作業者に発生した障害、放射線治療患者などの障害事例を通して研究されてきた。そして、放射線ほど人体の健康への影響について多くのことが明らかにされていることはないと言われている。しかし、すべてのことが判明してはいない。特に低線量・低線量率被ばくの影響については多くの細胞レベルでの実験が行われ、結果が報告されているが、いまだ議論の分かれるところである。今後も原水爆実験やチェルノブイリの原子炉事故等による被害者から貴重なデータがでるかもしれない。
 放射線の健康への影響は次のことを念頭に置く必要がある。被ばくの形態は全身被ばくなのか、部分被ばくなのか。また、被ばくの時間的分布は急性被ばくなのか、慢性被ばくなのか。次に被ばくした線量は多いのか、少ないのか。この3要因によって健康への影響は大きく異なる。つまり全身被ばくでは白血病や胎児の遺伝的影響や奇形の発生、部分的被ばくでは被ばくした部位のがんの発生が考えられるし、被ばくの時間的影響では人間には障害を回復する能力があるので影響の現れかたも異なる。もちろん線量が同じならば、急性被ばくのほうが影響は大きい。被ばく線量も多いほうが影響が大きいことは当然のことであるが、被ばく線量が少ないときには影響は発生しないのか、つまりしきい値は存在するのか。ICRPの報告では確定的影響(がんの発生)にはある、確率的影響(遺伝的影響)にはない?とあるが。また被ばく量が少ない場合にはホルミシス効果(細胞賦活効果)があるともいわれている。医療放射線従事者の被ばくの実態は線量が少なく、慢性的被ばくと考えられ、未だ被ばくの人体に与える影響すべての結論が出ているとは考えにくい。

2、世界の職業被ばく
 国連科学委員会による5年間の調査では、世界の職業被曝は表-1のようになっている。核燃料サイクルはウランの採鉱から精練、濃縮、燃料への加工、原子炉運転、再処理、研究などの被ばくを含んでいる。過去15年間で発電量3.5倍、従業員数は1.5倍となったが年集団実効線量には変化が見られない。一般産業では個人線量・集団線量が40%減少している。軍事面では冷戦終結と核実験の世界的停止が実現すれば減少する。医療従事者では集団線量については変化が見られないが、個人線量は減少傾向にある。しかし、WHOの報告にもあるようにX線診断の恩恵に浴しているのは世界人口の半数で、この利用拡大と新しい放射線診断方法の導入による職業被ばくは増加の可能性がある。自然放射線源からの被ばくは1.7mSvと比較的多い。除かれた航空乗務員は2〜3mSv、採鉱労働者では炭鉱が1〜2mSv、その他の鉱山では1〜10mSvである。この現状が過去50年間さらに今後50年間続くと自然放射線源からの被ばくが全体の76%、医療被ばくが19%、原子力発電が0.3%、職業被ばくが0.07%となる。

3、医療従事者の職業被ばく
 医療従事者の被ばくは長年の装置の改良、開発と被ばく防護の啓蒙により個人線量は減少傾向にあり、一部の放射線診療では職業被ばくはほとんど無視できる状態になっている。しかし限られた分野であるが、職業被ばくが依然問題視され、また新しい診療技術の導入により職業被ばくが発生している。現在、医療従事者の職業被ばくが考えられる放射線診療は以下の通りである。
@血管造影を伴う診療
 近年、IVR(Interventional Radiology)の技術が発展し、頭部、心臓、腹部などの診断から治療へと拡大の一途である。PTCAでは患者のX線火傷の例も報告されているほど被ばく量は多い。またCTによる透視技術も開発され、この診療にあたる従事者の被ばくは増加している。
A注腸造影
 X線テレビ装置の開発と改良により、遠隔操作が可能になり、飛躍的に被ばく線量は減ったが、上部消化管検査と違い、被検者から完全に離れられいため被ばくの問題は依然残っている。
B密封小線源治療
 婦人科系の小線源治療はRa,Csの針、管からラルスに置き換り、被ばくは減ったが、頭頸部がんなどはRaが使用されている。またIrが容易に使えるようになると被ばくは増加する可能性があり、高エネルギーのため遮へいも難しい。
C核医学診療
 非密封線源を扱うため外部被ばくと内部被ばくを考慮しなければならない。
@、Bについては特別な技術が要求され、これらの診療に従事する人に被ばくは集中する傾向にある。その他小児の撮影やポータブル撮影などは被ばくが考えられる。

4、核医学診療の職業被ばく
 核医学診療で受ける職業被ばくの作業を表-2に示した。外部被ばくでは現在核種の約80%の使用量があるTc-99mのジェネレータからの抽出、標識、分注、注射等の操作による被ばくが多い。近年では標識化合物がシリンジタイプで供給され、被ばく減少の可能性がある。内部被ばくは法改正により管理区域内の飲食が禁止され減少傾向にあるが、気体状RIを使用する時は十分な管理を考慮しなければならない。

5、医療機関における被ばく
 平成6年度の長瀬ランダウエアーの資料による医療機関従事者数56000人余の分析では平均線量当量(1cm線量当量)0.687mSv、1mSv以下が91%、20〜50mSvが176人、50mSv以上が21人であり、その内訳は医師11人、看護婦5人、技師3人、他2人であった。職業別被ばく線量では医師0.30mSv、放射線技師0.51mSv、核医学技師2.52mSv、看護婦0.14mSvとなっている。また皮膚組織線量(70μm線量当量)はフィルムバッヂとリングバッヂの被ばくの多い方で評価するが、リングバッヂ使用の2317人中の平均被ばく量は12.731mSv、500mSvを超えたのは11人であった。その内訳は医師3人、技師7人、他1人であった。

6、核医学診療からの職業被ばくの軽減
@防護の三原則(時間、距離、遮へい)を考慮したそれぞれの医療現場での効率的な作業手順の確立が必要である。
A放射性医薬品の適正量の使用による医療被ばくの軽減が職業被ばくを減らす一方策である。
B核医学従事者が被ばくを受けないようにする意識改革が必要である。

7、核医学医療被ばくの軽減
 核医学検査による医療被ばくはX線検査と比較すると一件当たりの被ばく線量は多いが、一カ月の件数は約6600件程度で胸部撮影の一日36万件に比べると1/50であり、医療被ばく全体に対する寄与は小さい。しかし日本の医療被ばくは他の先進国と比較すると3倍以上であり、医療被ばくの軽減は医療のどの分野でも真剣に取り組まなければならない技師の責務である。まづ、核医学検査を行う際、核医学医療情報と医療被ばくを比較して常にメリットが勝ることを確認する必要がある。厳密な行為の正当化と防護の最適化を実行し、無用な医療被ばくを軽減する努力がなされなければならない。

8、まとめ
 核医学従事者の被ばくについて、被ばくによる健康への影響、職業被ばくの実態、被ばく量、被ばく軽減などを述べてきたが、再度、被ばく軽減には行為の正当化(Justification)、防護の最適化(Optimization)、線量限度(Limitation)の三項目を常に遵守することを考え、核医学検査に臨みたい。



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第184回定例研究会
 放射線従事者の教育訓練
  RIの安全取り扱いについて
放射線技師の放射性医薬品に
  対する施設内取り扱いについて

川崎市立川崎病院
奥山 康男


 放射性医薬品とは、薬事法第2条第1項に規定される医薬品で、かつ原子力基本法第3条第5号に規定する放射線を放出するものであり、薬事法では「放射性医薬品の製造および取扱規則」に放射性核種とその化合物、およびそれらの製剤の範囲が示されている。
 製造(輸入)については、放射線を放出するため特別に注意を要する医薬品として。
体内診断用医薬品については「放射性医薬品基準」が、体外診断用医薬品については「体外診断用放射性医薬品指針」が定められている。
 私達、診療放射線技師が核医学検査の業務を日常遂行する上で、どのように放射性医薬品を施設内で取り扱われてるかを考察し、「RIの安全取り扱い」についての教育訓練とする。

▼RIの準備(分注、標識)
 日本核医学技術学会関東地方会広報誌(1995.10.Vol5.2)の平成6年度調査研究委員会(東海大学:福田 利雄 委員長)の「核医学診療従事者の実態調査」より、放射性医薬品の分注ならびに標識は図1のごとく、全平均で184施設中174施設(92%)の施設で放射線技師が担務している。医師または薬剤師等がその業務を担務していれば法的な良否は問題とされないが、実際に医師等が標識作業を行なっている施設は大学病院がほとんどであった。

▼RIの投与
 患者さんへ放射性医薬品を投与する担当者の分析においては図2のごとく、核医学専門医が担務する比率が全地域平均で12%。最も多い東京においても20%に過ぎず、全体の70%近くは放射線科医および各科の主治医ならびに注射担当医師が行なっている。
 核医学専門医が未だ全体的に少ない背景には病院的規模によるもの等、諸々の要因が挙げられるが、放射性医薬品を投与するには、やはり非密封放射性同位元素を取り 扱うための知識を十分に持ち備えている医師がベストであると思う。
 また、核医学専門医がいない施設において日常で困っていることを調査した結果、約40%がRI投与のための医師探しであった。

▼放射性医薬品の使用
 放射性医薬品を日常診療に使用する場合の基本的な考え方として「放射性医薬品の施設内取扱に関する指針」ということで放射性医薬品施設内管理専門委員会が取りまとめて、(社)日本アイソト−プ協会が1992年に資料を配布した。その中でも特に、『調整と品質管理』については以下のように記されている。
 <つぎの調整作業は、医師の指示の下で管理区域(準備室)において行なう。>
 (1)テクネチウムジェネレ−タからのミルキング
 (2)テクネチウム製剤の標識または特殊な標識(血球標識等)
 (3)バイアルからの分注
 「なお、現状では医師の責任の下に、薬剤師以外の者が調整している場合があるが将来的には調整の重要性から見て、薬剤師が主体的に行う体制を作ることが望ましい。」と以上のような内容である。実際に、調整および分注を行なっている施設において、その業務を担っているのは圧倒的に放射線技師が多く、その背景には医師の業務の煩雑性に大きく左右される要因がある。PL法の面からみても調整および分注に関しては充分な知識と技術を習得した者があたるべきで、その従事者の職種として放射線技師が適当であるか、否かは検討課題の1つであると言える。

▼放射線技師の役割
 ISRRT(世界放射線技師会)が1993年に「診療放射線技師の役割」として各モダリティごとに技師の役割を定義づけている。その中で「核医学部門における放射線技師の役割」として放射性医薬品および放射性医薬品の投与に関する内容を以下のごとく記している。
 <放射線技師は単純および複合放射性医薬品を調剤できる必要がある。これには以下が含まれる。>
 (1)RIジェネレ-タのセッティング
 (2)ジェネレ-タより抽出し、放射能を測定する
 (3)正確な容積と放射能量を算出する
 (4)臨床使用に適した形で放射性核種に無菌的に表示する
 <放射線技師は下記を行う>
 (1)患者に各種の放射性薬剤を静脈内投与または経口投与の介助をする/又は実施する
 (2)投与量が必ず正確であること(放射性薬剤および放射能量)
 (3)投与時間を含む正確な投与量を記録する
 以上のように、医薬品ならびに医薬品の投与に関する放射線技師の役割として定義づけられているが、当然のことながら日本と世界の技師教育ならびに国の考え方が違うので一概にはあてはまらないが、放射性医薬品に対する『投与線量の最適化』ならびに『品質管理』は世界規模においても提言されてることであり、我々の日常業務においてRIの安全取り扱い及び使用は充分留意して、執務に専念すべきである。



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核医学オーダリングシステムを考える
 核医学検査オーダーの作成経験から

横浜市立大学附属病院 医事課
深谷 隆司


 当病院は平成3年7月、横浜市金沢区福浦で開院いたしました。
 病棟623床、外来患者1800人を想定し、効率的かつ正確に病院運用するためにはコンピュータシステムの活用が重要と考え、データの発生源においてリアルタイムに入力するシステム(以降、オーダリングシステム)を前提としてシステム構築いたしました。
 特に画像・生理オーダに関しましては、このオーダリングシステムの中核的システムとして位置づけ、開発してまいりました。
 開院当初は予約の必要が無い検査からオーダを開始し、平成5年4月から大部分の予約検査、平成7年5月から核医学検査を稼動しています。

(核医学検査オーダの問題点)
 核医学検査は注射とScanがペアで行われます。
 したがいまして、ひとつの操作で二つの予約検査を連動してコントロールする必要があります。しかも検査内容・使用する核種により注射日とScan日の隔たりが異なります。この点が当初システム化に際しての最大の難点となりました。
 つまり、患者の希望に沿いつつ、注射日・Scan日を設定する際、二つの予約を矛盾無く、かつ効率的に確保しなければならないからです。
 これは、相当複雑なロジックになる事が予想され、開発は一時凍結されました。
 この問題の、再検討が行われたのは、平成5年11月からの事です。放射線部の核医学担当技師・私ども医療情報係・当時画像オーダの開発を委託しておりましたNECのシステムエンジニアが集まり検討し「核医学検査オーダリング化に関する前提事項」を作成したしました。

 前提事項の概要は
1.オーダは、注射日を予約入力する事により、各検査項目の基本マスターで指定された期間を隔てた日に、先付けオーダを自動発生させる。(ここで先付けオーダと述べている事にご注目ください。先付けオーダとは、未来の日付にオーダを作成する事をいい、予約検査とは分けて考えます。予約検査とは、予約枠管理を行い、日・時間を固定化するものと定義いたします)
2.もし、先付け検査オーダ対象日が休日もしくは検査を行わない日にあたる場合は、あらかじめ該当する注射予約枠を削除する。
3.まとめて予約枠を管理する検査項目群毎に予約用コードを作成する。つまり、予約枠は注射日のみに設定し、予約が取れるということは必ずScanできると仮定したわけです。
 これにより、Scan日は単なる先付けオーダとして扱う事ができます。もし、Scanオーダ対象日が休日もしくはScanを行わない日にあたる場合は、あらかじめ該当する注射予約枠側を削除すれば、その日はオーダがされない訳です。
 また、検査室単位での予約管理を改め、まとめて予約枠を管理する検査項目群(同一の曜日に注射し、同一期間を隔てた日にScanする検査で、かつ同じ枠で予約管理する必要のある検査項目群)毎に予約用コードを作成する事により、枠管理を簡素化しました。

(結び)
 以上、核医学検査オーダリング化にあたり考慮した点をお話してまいりましたが、まだまだ使い勝手の面で課題は残されております。しかしながら、まがりなりにも、日々運用できている事を考えますと一定の成果を得られたものと考えております。
 これはひとえに常に検査室の効率的運用を考え、的確な指摘によりご指導頂ました放射線部技師の皆様、並びにDr.の皆様のおかげと考えております。あらためてお礼申し上げます。



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核医学オーダリングシステムを考える
 作る立場(RISメーカー)から

(株)東芝 医用機器事業部
内山 章


1.まえがき
 放射線部門とりわけ核医学におけるシステム化は,困難と言われている。本発表では,RISメーカの立場から,次の項目について概要を説明させて戴いた。

2.オーダリングシステム及びPACSとRISとの関係概要
 放射線部門をとりまくシステム化の動きとして,大きくオーダリングシステムとPACSがあげられる。RISは,両システムの中間に位置し,以下の機能のサポートが望まれる。
 1)検査依頼票情報の電子化
 2)読影レポート情報の電子化
 3)検査依頼票情報,読影レポート情報と医用画像との関連付け
 4)造影剤在庫管理,各種集計・統計等の部門内業務処理

3.考察:放射線オーダリングシステム構築上の問題点
 放射線オーダリングシステムにおいては,検査依頼票の電子化として,検査依頼情報のコンピュータ入力が必要となる。オーダリングシステムの背景には,発生源入力という考えがあり,各情報について決定入力する人が分担され,かつ,各業務間で同じ情報の再入力がないことが理想とされている。
 各情報の入力については,以下の課題があり,その解決レベルによって,オーダリングシステムの実現形態も異なる。
 1)非定型検査指示情報の入力
 2)検査予約に関する人間系による柔軟な管理のコンピュータ化
 3)撮影順序に関する技師のノウハウのコンピュータ化
 4)撮影条件の簡易入力(モダリティからのオンライン入力)

4.考察:核医学におけるオーダリングシステム構築上の問題点
 核医学においては,検査予約取得上の制約条件が,さらに複雑かつ専門的であり,システム化が非常に困難である。完全な形でのコンピュータシステム化ではなく,運用と協調した形でのシステム化が望まれる。その運用にあたっては,施設内での合意が必要となる。
 また,検査オーダと部門内業務処理としてのRI入庫・標識・分注・投与・検査・保管・廃棄との関連付け及びその帳票の作成が必要となる。この点も,放射線部門におけるフィルム在庫管理等に比較すると複雑であるが,実現可能となってきている。

参考文献
1)放射線部門情報管理システムTOSRIM(東芝レビュー 1991 Vol.46 No.2)
2)画像診断システム(東芝レビュー 1994 Vol.49 No.2)
3)クライアント/サーバー型 放射線部門情報管理システム TOSRIM(メディカルレビュー 1996 Vol.20 No.2)



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核医学オーダリングシステムを考える
 当院の核医学オーダーシステムについて

北里大学東病院
原 信康


 当院は、10年前に開院した500床余りの病院で、核医学施設はガンマカメラ(GCA90B)が1台あるだけの小規模施設です。
 当院の開設当初からの方針として、発生源入力を基本とした病院内業務を有機的に結びつけたトータルシステムを構築することがありました。放射線関係の諸検査もその方針に基づき、開院当初から核医学以外の検査予約は発生源入力によるシステムが稼働しましたが、核医学検査については、各検査項目ごとに注射から検査までの待ち時間、検査の所要時間、追検査の回数等が違うため予約のパターン化が難しく開院当初には発生源入力によるオーダーシステムを稼働することができず、3年前からプログラムが完成して発生源入力によるシステムが稼働するようになりました。
 核医学オーダーは、他の検査も同様ですが、外来では診察室の端末で、また入院では病棟の端末で核医学検査の画面で項目番号とコメントを入力し、展開した画面上の当該患者の検査予約状況と空き枠を確かめて予約日時を入力します。空き枠がなければ予約が入らないようになっていますが、当該患者の他の検査との重なりはチェックされないため検査予約状況の確認が必要になります。
 予約枠のコントロールは、「予約枠設定」と「核医学枠管理」の二重の枠設定によってコントロールされています。「予約枠設定」は、他の検査とも共通の予約枠の設定形式で、「核医学検査」(各検査項目ごとではなく)枠、「注射」(各検査項目ごとではなく)枠を各曜日の開始予約時間とその時間帯の枠数を設定し、その週間スケジュールを月別のカレンダーにコピーして各月の標準となる予約枠を設定します。日ごとの予約枠を変更したい時は月別カレンダーを表示させて日を指定して、開始予約時間とその時間帯の枠数を設定すればよい。「核医学枠管理」は、核医学独自の予約枠の設定形式で各検査項目ごとの検査開始時間の設定を基準にして注射時間、追検査時間の設定がされます。各検査の予約は、「予約枠設定」の空き枠と「核医学枠管理」の設定枠が同時に満足されなければ予約できません。当然、注射時間、追検査時間は検査開始時間と同時に予約されます。また、緊急検査等で柔軟に予約しなければならない時のために「フリー予約」の設定形式があり「フリー予約」にすると「核医学枠管理」の制限を受けずに「予約枠設定」の制限のみで設定が可能になります。「予約枠設定」は前述したように簡単に日ごとの変更が可能です。検査薬の注文、法廷管理簿のチェック等に週間の予約表がほしいのですがコンピュータからの打ち出しが現在まだできないため、補助的に週間予約台帳を記入しています。
 当院は、前述した通りガンマカメラ(GCA90B)が1台あるだけですので多数のガンマカメラ等の検査機器のある施設では、そのまま当院のシステムを取り入れるのは難しいかもしれませんが参考にはなるかもしれません。



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私のパソコン活用術(1)
 私がWindows3.1を選択した本当のわけ…

東海大学核医学診療科
福井 浩


 私がこのコーナーの最初の著者に選ばれたのは、コンピューター所有者の中で最もビギナーに近い存在であるからでしょう。本題に入る前に私のマシンの紹介をしましょう。今年の6月に、大地康雄と有田気恵のCMでお馴染みのcanbe NEC PC-9801 Cb2-Mを世代遅れということで定価298.000円していたものを88,000円で購入しました。標準装備でWINDOW3.1.RAM-8M.倍速CD-ROM.CPU-486DX2(66MHz).FAXモデムは14400bps.TVチューナー付きという代物です。後に入れたソフトとしては、Microsoft OFFICE(WORD.EXCEL.POWER POINT)、一太郎-vr6、Delta Graph、Netscape-vr2などです。それでは、1世代前の総額100.000円以下のこのマシンで、何ができますか?と言いますと、これがすてた物ではありません。まず、TVが見える(これが1番重要?)。TVを見ながらワープロも打てる。FAXも送れる。CDも聞ける。画像の取り込みもできる。今流行のインターネットもできますし、メールも送れます。私のようなビギナーにとって充分すぎると思っています。とは言うものの、なぜ今や主流であるWindows95にしなかったの?と言いますと、ここに私の大本命があるのです。実は私、根っからのギャンブル好きでして、中でも競馬(馬さんが走るあの姿)がたまらなく好きなのです。そこに来て、JRA(日本中央競馬会)にPAT方式電話投票(なんと自宅に居ながら馬券がコンピューターで買えるシステム)なるものの存在を知り、コンピューターを買うしかないと判断しました。その馬券の購入がWindows3.1にしか対応してないので、我が家のコンピューターはWindows3.1となったわけです。そんなわけで、平日は女房がインターネットでSMAP(中居くんの大ファン)のHOME PAGEを見たり、FAXを送ったり(手紙大好き)、週末は私がインターネットで競馬情報を入手し、馬券を買ったりと、それなりにみんなに愛されながら活躍中です。But、安く買ったコンピューターではありますが、競馬代のほうが高くついてしまうかな・・・・・?
 ちなみに競馬情報は・・・・http://www.k-ba.com/cgi-bin
 著者のメールアドレスは・・・fukui@is.icc.u-tokai.ac.jpです。



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編集後記
東海大学病院 核医学
村上 剛


 神奈核ニュースの第2号は、3回分の定例研究会の抄録を掲載し、かなりのボリュームになりました。というのも、演者の皆様のご厚意により、原稿がスムーズに集まったおかげです。この場を借りてお礼申し上げます。今後とも、ご協力のほどお願いいたします。
 私のパソコン活用術のコーナーを設けました。連載の予定でいますので、このコーナーへの投稿をお待ちしております。また、他に連載希望のコーナーがありましたらご一報下さい。
 残暑きびしく、食べ物にも気を使わなければならない今日このごろ、みなさまもお体をおいたわり下さい。
 投稿・ご要望・お叱り・ご感想等は、下記まで、または、お近くの研究会常任幹事までお願いします。

259-11 伊勢原市望星台 東海大学病院 核医学 村上 剛
TEL:0463-93-1121(内3471) FAX:0463-91-1350
インターネットメールアドレス:mura@is.icc.u-tokai.ac.jp


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