神奈核ニュース No.5(1997.9) 目次


神奈川核医学研究会200回記念大会案内神奈川核医学研究会
第193回定例研究会(1997.3)
  Patlak Plot法における測定・解析上の留意点
(株)第一ラジオアイソトープ研究所
 市場開発部
水田 吉彦
第193回定例研究会(1997.3)
  ビトロの精度管理(いわゆるTQC)
保健科学研究所
精度管理室
川崎 邦之
第194回定例研究会(1997.4)
  神奈核教育訓練
最近の法律に関する話題
神奈川県立循環器呼吸器病センター中村 豊
第195回定例研究会(1997.5)
  肝GSAシンチグラフィの臨床使用とその有用性
昭和大学藤が丘病院
放射線科
長谷部 伸
第195回定例研究会(1997.5)
  肝臓の核医学検査法−99mTc-GSAの定量法について−
昭和大学藤が丘病院
中央放射線部 核医学検査室
新尾 泰男
第196回定例研究会(1997.6)
  骨シンチ『異常集積の少ない骨転移』
神奈川県立がんセンター小野 慈
第196回定例研究会(1997.6)
  骨シンチ検査の基礎講座
神奈川県立循環器呼吸器病センター大島 正行
私のパソコン活用術(4)
  それでもMac(事実の検証)
東海大学病院藤田 昭
家庭サ−ビス(3)警友総合病院金谷 利久
編集後記東海大学病院
  核医学
村上 剛


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神奈川核医学研究会
第200回記念大会
Kanagawa society of Nuclear Medicine



 
日 時平成9年11月29日(土)14:00
会 場横浜市開港記念会館
 (JR関内駅から徒歩約10分)
会 費大会参加費 ¥ 500
 懇親会費  ¥4,500

 プログラム
14:00受付開始
14:30大会長挨拶
14:40記念講演
「21世紀の核医学診断の展望」
 横浜市立大学 講師池上 匡 先生
15:20特別講演
「多発性骨転移患者に対する89Srによる除痛治療について」
 北里大学 助教授堀池 重治 先生
16:00シンポジウム 「神奈核の誕生から現在まで」
 川崎市立井田病院長谷川 武
 県立循環器呼吸気病センター中村 豊
 東海大学病院福田 利雄
 川崎市立川崎病院奥山 康男
17:00懇親会
 ビアレストラン コープランドハウス


神奈川核医学研究会では、下記のとおり、第200回記念大会を開催いたします。公私とも お忙しいこととは存じますが、お誘い合わせの上、ご参加下さいますようお願い致します。



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第193回定例研究会(1997.3)
Patlak Plot法における測定・解析上の留意点

株)第一ラジオアイソトープ研究所
水田 吉彦


 1991年、金沢大学の松田博史(現・国立精神神経センター武蔵病院)らは、99mTc標識のSPECT製剤を用いて、動脈採血を必要としない非侵襲的な局所脳血流定量法を考案した。本法はDr.Patlakが提唱したPatlak PlotとDr.Lassenの補正式が組み合わされており、一般には"パトラックプロット法"と称される。本法は通常のSPECT撮像に2分間以内のRIアンギオグラフィを追加するだけという簡便さに加え、良好な測定再現性(同一例を別日に2回測定,Fig.1)1)を有することから、国内にて広く臨床応用されている。

 一方、如何なる測定法にも「測定・解析上の留意点」が有るように、本法にも測定精度を維持しつつ異常値の発生を回避するための留意点が存在する。昨年1年間で異常値が報告されたケースを追跡調査した結果、原因不明なものは殆どなく、大部分において"テクニカル・ピットホール"(不注意および勘違いによる技術的なミス)が確認された。その内訳(のべ数)をFig.2へ示すとともに、代表的な項目について解説を加える。

【投与方法】
模範的手技として、「21G針で血管確保し、15mlの生理食塩水を用いて10〜15秒間で定速投与する」が提唱されている2)。本法ではAortaデータから得られる入力関数の形状が測定精度に影響することから、ボーラス性ではなく"超短時間・定速静注"の概念が優先される。

【Aorta同定】
入力関数を規定するAortaの同定は、その正確度が測定結果に反映される重要な因子である。AortaのROI設定に際してフレーム(/sec)の重ね合わせを行うが、通常4〜5フレーム程度が限度であり、これを越えた場合には肺野のバックグランド上昇が問題となり、Aortaの同定が困難となる2)。従来いわれていた10フレーム以上の重ね合わせは、禁忌と考えられる。また、Time Activity Curve上でAortaのみが同定されているのを必ず確認し、それ以外の血管系の混入を認めた時には、ROIを再設定することが必要である。

【SPECT平均カウントの算出】
本法では、Patlak Plotにて平均脳血流量を算出した後、Lassenの補正式を用いてこれを局所脳血流量へ展開する。この際、最も重要となるのが、SPECT画像上における平均カウントの算出である。この解析操作は"Lassenの参照領域設定"と称されるオペレーション・ステップである。従来の低分解能カメラでは、基底核スライスを対象として左右大脳半球を直線的に2分割する方法(脳室ならびに白質を含む)が一般的であった。しかし、この方法を近年の高分解能SPECT像に適用した場合、脳質や白質の関与が大きいため大脳半球の平均カウントが低値に算出され、結果として高い局所脳血流量が得られてしまう。最初のRIアンギオで検出される放射能の殆どは灰白質(大脳皮質や基底核)に由来し、脳室や白質はこれに関与しない。従って、高分解能SPECT像におけるLassen参照領域設定にはトレーサーの集積部位を特定する手法が必要であり、現在では45%threshold法が有効かつ正確であると考えられている2)

 以上、要点を略記したごとく、測定・解析上の留意点を守って間違いの無い操作を行えば、信頼性の高い値が得られる。一方、脳血流量には固有の"加齢変化"が認められている。代表的な報告3)をFig.3に引用するが、こうした測定対象項目の特徴を理解しておくことも、測定・解析上の留意点とあわせて必要な予備知識と思われる。

1)松田博史 核医学会関東甲信越地方会(1997,東京)& INNERVISION:(12.2)p.42-46,1997
2)筆者省略 映像情報Medical:28(1)p.3-42,1996
3)駒谷昭夫 脳神経:42(9)p.889-893,1990



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第193回定例研究会(1997.3)
ビトロの精度管理(いわゆるTQC)

保健科学研究所 精度管理室
川崎 邦之


  はじめに
 「臨床検査は何のために行うのか?」それは病気の診断、臨床経過および治療効果の判定をするために行うものでもあり自分自身は健康状態であると思っていても、健康診断や人間ドックで臨床検査を行うことによって病気を発見したり予防したりすることが可能になった。このように日常の医療では臨床医が臨床検査データを正しく判定することで重要な意味を持ってくる。現在、臨床検査において精度管理が盛んにいわれるようになり精度のよい検査結果が臨床医による診断をより正確にしている。精度のよい検査データを臨床医に報告するためには検体採取から分析結果の報告までの各工程について総合的な精度管理(Total Quality Control:TQC)をしていくことが重要になる。登録衛生検査所では昭和61年に施行された厚生省令「精度管理指導要領」に基づいた総合精度管理体制が構築されている。これは、組織・作業工程・技術の管理で次のとおりである。

1.精度管理組織
 一般に衛生検査所の精度管理組織は図1のような形態で、「精度管理責任者」は現業部門から完全に独立した形で設置され、その業務は日常精度管理実施状況の確認と精度上の不具合について「管理者」への改善勧告を行い、必要に応じ問題解決法を提案して分析結果の精度維持が確実に実施されているかを確認する。また、各部門には「精度管理担当者」が任命されており、日常の精度管理業務を受け持っており、現場で発生した諸問題や全社に関係する改善課題などについては、定期的に開催される精度管理委員会に提起され問題解決の検討が行われ、組織一体となった改善活動が推進できる体制となっている。

2.作業工程の管理
 検査案内書に準じて医療機関で適切に採取された検体(血液、尿等の体液)を受領してから搬送、受付及び仕分け、検査測定、検査結果の報告に至るまでの全工程について作業の標準化を図るため作業環境、作業方法、機器操作法、保守点検法、注意事項など詳細に定めた各種標準作業書を作成している(図2)。さらに、各種日誌、台帳類を業務記録として記入、保管し不具合発生時に原因究明、再発防止対策の資料とする。



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第194回定例研究会(1997.4)
  神奈核教育訓練
最近の法律に関する話題

神奈川県立循環器呼吸器病センター
中村 豊


1.ICRP60(1990年勧告)の採択について
 1990年に勧告されたICRP60は、日本では早期に批准され、採択されるとの予想が各方面にあったが、7年を経過して、やっとその動きが見えてきた。90年勧告については昨年この研究会で述べさせていただいたし、成書も出ているので今回は省略するが、この勧告の内容がどのように採択されるかによる放射線管理上の問題点を挙げてみる。
 大きく変わる項目としては、職業人に対する線量限度である。その線量限度は100mSv/5年とあり、現行の50mSv/年とでは単純計算で2/5倍となる。これが原文のまま採択されるのか、20mSv/年と表現されるのかでは放射線管理のし易さまた数字の持つ意味合いが大きく異なる。女性職業人に対する線量限度にも大きな変化 がある。現行は妊娠可能な女子の腹部については13mSv/3月であるが、これを職業人として性差別を無くす方向である。この理由は女性の働く権利を強く主張する欧米諸国の意見が採り入れられたようであるが、日本女性の意識はどうであろうか。ある調査によれば、賛否両論で意見が別れるとあった。次に胎児に対する線量限度にも大きな変化がある。現行は妊娠と診断とされてから出産までの期間中の女子の腹部については10mSvであるが、90年勧告では妊娠を申告してから出産までの期間の腹部表面線量を2mSv以下とし、胎児の受ける線量を一般人と同様の1mSv以下とすることである。
 施設管理にも「監視区域」を導入するかどうかという問題点がある。現行の管理区域の外に監視区域を設けることにより、施設や設備の有効利用が図れる反面、その設定が一律に行われたり、監視区域での放射線管理の必要性が規定されると放射線管理がより煩雑になることが予想される。

2.医療放射線管理の一元化について
 政府の臨時行政改革推進審議会の規制緩和を受けて厚生省は医療放射線管理の充実に関する検討会を発足させ、医療法と放射線障害防止法による二重規制を医療法に一元化するとの結論を導いた。しかし、一元化するには、放射線障害防止法と同等の安全性を確保するために医療法において以下のような諸規定を整備する必要があるとした。
・放射線科医師、放射線技師が許認可事務および検査などの実務を担う。
・放射線科医師、放射線技師の放射線管理技術のレベルアップを図る。
・施設検査及び定期検査の実施。
・教育訓練の実施。
・放射線障害予防規定の作成。
・放射線取扱い主任者の選任。
・安全管理体制の充実。
・院内搬送管理体制の充実。
 さらに、今後は医療放射線の適正利用についても検討が必要であると言及している。

3.放射性医薬品の院内標識について
 厚生省は医療法改正に伴い、医療における放射線の適正利用と管理体制の研究の中で、「放射性薬剤の院内調整に関する研究」を行っている。厚生省は放射性医薬品の院内調 整は調剤であり、薬剤師の独占業務であるという認識である。しかし、現状は核医学検査に携わる放射線技師が大半を行っている。この現実に対し、放射線技師の中でも、本来の責任業務である医師や薬剤師が行うべきであるという意見と、放射線技師に法的根拠を与えるべきであるとする意見がある。この研究の結論では、放射線技師に法律的根拠を与えることは現実的でなく、薬剤師の再教育を行い、薬剤師を配置するとある。厚生省は医療法改正に伴う放射性医薬品の取扱いについては関連学会と調整するとし、現在これが進行中である。
 核医学に関係する最近の法律について話題を提供したが、会員諸氏はどのように考えるのであろうか。



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第195回定例研究会(1997.5)
肝GSAシンチグラフィの臨床使用とその有用性

昭和大学藤が丘病院 放射線科
長谷部 伸


  1.はじめに
 1992年に臨床使用可能になった肝GSAシンチグラフィは、肝アシアロ糖蛋白受容体に特異的に結合するレセプターイメージング製剤として従来の肝イメージング製剤にない種々の利点を有している。たとえば1)今までの研究報告から、肝の集積程度が肝予備能を反映していることがわかっている。2)肝のみに特異的に集積し、しかも排泄が遅いため比較的簡単なコンパートメントモデルを設定でき、定量化しやすい。3)黄疸や肝血流の増減に影響されにくい、等擧げられる。昭和大学藤が丘病院では、1993年から現在までおよそ900例同検査を施行しており、その使用経験から適応と有用性について考えてみたい。

2.撮像方法
 我々の施設では、まず99mTc-GSA 185MBq(リガンド量3mg)を肘静脈から比較的急速に静注し、心肝を含む体前面にガンマカメラを向け、20分間の連続収集を行っている。その後約20分間で肝SPECTの撮像を行い、投与50分後に全身前面像を得ている。

3.定量指標−肝予備能の評価
 肝予備能の評価は、肝切除、肝放射線治療の可否または範囲の決定や、肝障害の治療評価および経過観察に不可欠である。現在の肝予備能評価は、負荷検査(例えばICG)または血液生化学データを組み合わせて評価する方法がよく使用されている。一方、GSAが特異的に結合するアシアロ糖蛋白受容体は、肝機能低下、肝細胞数減少に平行して減少することが確認されており、したがって肝GSAシンチグラフィにより簡便に肝予備能を評価することができる。
 肝GSAシンチグラフィの定量指標に関しては種々提唱され、前面像の肝および心に関心領域を定め、それを入力として用いるものが多い。簡便なものとして、3分および15分時の心・肝関心領域のカウントを用いて算出したLHL15, HH15が一般に指標として用いられているが、その他投与シリンジカウントに対する肝の3分または15分のカウント比であるLU3, LU15、肝・心時間放射能曲線を入力関数としてPatlak Plotやコンパートメントモデルを用いた指標(Ku,Rmaxなど)が考案されている。いずれの指標も他の肝予備能指標とよく相関することが報告されているが、我々は、いずれの定量指標がより肝予備能評価に適しているかを評価する目的で、同一症例群について種々の指標の比較を行った。対象とした従来の肝予備能指標は、三重大1外科肝機能検査値グレード分類、Child-Turcotte classification score(CTC score)、ICGR15である。結果はPatlak PlotのKu、1-compartment modelのKu, Ku/Keはやや従来指標との相関に劣るものの、LHL15, HH15, LU3, LU15, 5-compartment modelのRmaxは相関係数に大きな差はなかった。次に2カ月以内に2回の検査が施行され、その間無治療で肝機能の変動がないと判断された症例について、2回のGSAシンチグラフィの定量指標の変動から再現性を検討してみた。結果は、LU15, LU3, LHL15, 1-compartment modelのKu, HH15, Patlak PlotのKu, 5-compartment modelのRmaxの順に再現性が高かった。したがって、GSAの定量指標に関しては、比較的簡便なLU15や従来から汎用されているLHL15, HH15で充分肝予備能の評価は可能で、演算の複雑なコンパートメントモデルを用いた方法よりも再現性もよく、実際の臨床使用に適していると考える。
 肝GSAシンチグラフィの定量指標を肝予備能の経時的変化の観察に使用するときに注意すべき点として、肝切除術やTAEなど肝に強い侵襲を加えた後に残存肝組織のGSA集積が一過性に高くなることが知られており、自験例でも肝切除術後20日以内の単位肝体積あたりのLU3は70%の症例で良化していたことが確認された。また、この一過性の集積増加が一カ月以上続いていた症例も散見された。血中HGFの増加とGSA集積増加が平行していたとの報告からも、GSAとアシアロ糖蛋白受容体の結合活性やturn-overが種々の物質により生体内で変化している可能性があり、今後の研究課題として興味が持たれている。

4、機能的肝容積評価
 肝容積の評価は、肝切除術後の肝再生の程度や劇症肝炎の病勢把握等に重要であるが、従来CTにて各スライス面にて肝の境界を囲って積算していたものを、肝GSAシンチグラフィではSPECT像から自動計算で簡便に求めることが可能である。GSAは肝以外に集積しないため肝辺縁の抽出が容易であること、および排泄が遅く肝内に長く留まりSPECT撮像時の集積の経時変化が少ないことにより肝容積算出に有利である。我々はファントム実験およびCTによる算出容積との比較により、現在cut-off 34%にて自動輪郭抽出をし核医学データ処理装置上で肝容積を算出している。
 また、算出された肝容積とGSA定量指標を組み合わせた指標をもちいれば、肝切除術後の残肝予備能を予想し得、肝不全等の術後合併症を出現させない適正な手術が選択し得るであろうと思われる。

5、まとめ
 肝GSAシンチグラフィは、種々の肝疾患症例において簡便に肝予備能を評価でき、その重症度の評価や経過観察に有用であるとともに、SPECT像から肝容積を比較的正確に自動算出することも容易であり、機能・形態の両面から総合的に病態を把握できる検査である。まだ比較的新しい薬剤でもあり一般に広く使用されているとはいいがたく、さらに多施設にて臨床使用され本検査の利点が理解されることを願っている。



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第195回定例研究会(1997.5)
肝臓の核医学検査法−99mTc-GSAの定量法について−

昭和大学藤が丘病院 中央放射線部
新尾泰男


 99mTc-GSAは肝細胞にのみ存在するアシアロ糖蛋白受容体に特異的に結合する製剤として報告されている。その特異的結合である肝集積か残肝予備能を反映するとされ、種々肝疾患群の重症度判定や術後の予後判定等に利用されている。この99mTc-GSAを臨床利用するにあたり、残肝予備能を表すのに種々の定量法が考案され、それによる指標の有用性が報告されている。今回はそれらの指標算出法、即ち99mTc-GSAの定量並びに半定量の方法についてまとめ、紹介します。
 定量法を大きく分けるとplanar法、全身scan法、SPECT法に区分できる。これらを私なりに更に細分化し、既報の定量法を分別し表してみた。

1.肝GSAの定量法の分類
T.planar法(dynamic study)
T.1.non compartment法
   1.HH15,LHL15
   2.LHL15/HH15(関西医大:河ら)
   3.LU3,LU15(山梨医大:小泉ら)
   4.視覚評価(grade分類)
     5分時の心・肝の摂取状態(久留米大、関西医大)
   5.肝排泄時間100-120min(大阪厚生年金:柏木ら)
   6.Extraction Index
     EI5=(L5-L3)/(H3+H5)*PH/PL(慶応大:橋本ら)
T.2.compartment法
   1.1-compartment model
      1.conventional method(Ku,Ke)
      2.非線形fitting method(金沢大:秀毛ら)
      3.線形fitting method(昭和大藤が丘:篠原ら)
      4.graph plot method(金沢大:秀毛ら、昭和大藤が丘:篠原ら)
   2.2-compartment model
      1.2-exponential fitting(関西医大:羽間、岡山大:郷原ら、他)
      2.keinetic model(大阪府立成人病:長谷川ら)
   3.3-compartment model(Univ.of California:D.Veraら、神戸市民:工藤ら)
   4.5-compartment model(関西医大:河ら、昭和大藤が丘:篠原ら)
   5.7-compartment model(東大:三木ら)
U.全身scan
U.1.全身肝摂取率(昭和大藤が丘:篠原、新尾ら)
V.SPECT法
V.1.static SPECT法
   1.volume算出
   2.局所機能解析(筑波大、その他)
   3.局所摂取率(残肝count比、山梨医大:小泉ら)
   4.全肝摂取率(昭和大藤が丘:新尾ら)
V.2.dynamic SPECT法
   1.compartment法
     機能解析(昭和大、山形大、旭川医大、その他)
   2.摂取率法(山形大、その他)
   3.その他

2.定量法の解説
 前述の方法に関し抜粋で解説する。
(1)planar法の中で代表的な方法はHH15,LHL15である。これらは国内一般に利用されている方法であり、殆どの施設が標準法として採用している。HH15(心15分値/心3分値)は血中クリアランスを示し、LHL15(肝15分値/(心15分値+肝15分値))は肝摂取率を表すとされている。非常に手軽な方法であり、どこの施設でもすぐに利用できる。しかし、心・肝のROI設定により値が変動しやすい事と、その比率計算の特徴からHH15は重症付近の分離が難しいこと、LHL15は正常群と軽度障害群の分離が難しい事が問題点とされている。これらの問題点を解決すべく種々の方法が考案された。関西医大:河らのLHL15/HH15が一方法であるが、山梨医大:小泉らのLU3,LU15が心臓のROI設定が必要ないため、私どもの経験からも安定した方法であると思える。(Fig.1)。

ただし、注射筒を測定する幾何学的dimensionにおけるガンマカメラ検出部の計数率特性を事前にcheckし、数え落としのない領域であることを確認しておく必要がある。データ処理装置を用いずにimageのみで機能評価するgrade分類も報告されているが、昨今のdigital systemでは、様々な肝機能障害の程度を客観性のある画像で出力するのは難しいのではないかと考えます。どのような濃度にも表現できるdigitalの良さが、かえって基準を作る事を難しくしています。(Fig.2)

(2)compartment解析に関しては代表的なものは、1-compartment model(秀毛らの非線形model(Fig.3)に始まるが、篠原が報告した如く線形modelでの短時間に演算可能な方法でも実用的であった。Veraらが唱えた3-compartment modelは採血を伴うmodel式を利用しており、やや煩雑さを伴っている。河らが提唱した5-compartment modelは複雑な計算式を必要としているが、肝最大除去率(Rmax)を算出可能である。(Fig.4)

(3)SPECT法は当初static SPECTで、局所ないしは全肝予備能を表す画像と指標を各施設検討し報告してきた。肝摂取率の低下した例で如何に精度よく辺縁抽出できるかがpointとなる。最近では、dynamic SPECTでcompartment model解析の報告例が増加している。SPECT法は吸収補正をすることにより深さ方向の情報に優れるため、また各再構成像により術式のsimulationや術後の残肝予備能の予測等の報告があり、その有用性が評価されている。これらを反映させ、且つ臨床各科からの期待に応えるため、また精度向上を考えれば、今後は可能で有ればdynamic SPECTでのdata収集や解析が望ましい。

 

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第196回定例研究会(1997.6)
骨シンチ『異常集積の少ない骨転移』

神奈川県立がんセンター
小野 慈


 骨シンチグラフィはがん患者の骨転移の検索に広く使われている。全身の骨が一括して見渡せ、かつ病巣部位が高集積としてhotに写り、誰にでも容易に指摘できる客観性があるためと思われる。しかしながら病巣部位が高集積とならず低集積として写る現象もあり、coldメタとして1980年ころから報告がみられる。1990年代に入りMRIの普及と性能の向上の結果、骨シンチで写らない骨転移巣が少なくないことがわっかてきた。2,3mm大の骨転移が骨シンチで写らないことは理解できるが、MRI上椎骨全体が骨転移の信号強度を示しながら骨シンチは正常像である症例(isoメタ)も経験され骨シンチの評価に問題を提起している。
 原発性骨悪性腫瘍における骨シンチ異常集積の少ない疾患について1982年の核医学総会にて発表している。43例中8例18.6%の頻度でみられ、骨肉腫、軟骨肉腫以外の病理組織診断のついた疾患に多い。骨繊維肉腫、骨細網肉腫、滑膜肉腫、血管肉腫、悪性繊維性組織球腫、悪性巨細胞腫などであった。更に骨シンチ異常集積の少ない骨盤原発悪性骨腫瘍について、1994年核医学総会にて発表している。このときの病理組織診断は悪性繊維性組織球腫、仙骨脊索腫、悪性リンパ腫、滑膜肉腫であった。この中には多発性骨髄腫は含まれていないが、多発性骨髄腫が isoメタ、coldメタ、hotメタと多様な骨シンチ所見を呈することはX線診断との対比にて、MRIが普及する以前から知られており骨シンチの読影上特異な疾患としてノミネートされている。
 骨転移についてはどうか?骨シンチ異常集積の少ない骨転移は原発部位、病理組織診、病期、臨床経過、などの要因と関係があるだろうか。その頻度は?今のところ判明しているのは腎臓癌について骨シンチの異常集積から調べた結果がある(1990年核医学総会)。 isoメタ、coldメタの所見を持つ症例は、腎臓癌骨メタ症例の23.5%(3/13)にみられるのに対し肺癌では、3.03%(1/33)、前立腺癌 1.96%(1/51)とあきらかに腎臓癌で高率である。骨シンチ異常集積の少ない骨転移は腎以外の原発部位では肝臓、甲状腺に多い印象をもつが数量的裏づけはまだない。とくにisoメタについては骨シンチ異常からの調査は無意味でMRIで調べてみたいのだが、がん患者全例の全骨についてMRI検査をするわけにもいかないから経験的アプローチで、isoメタ、coldメタの実態を積み重ねていくほかないと思われる。腎臓癌4例、甲状腺癌2例、肝臓癌2例、乳癌2例、大腸癌、子宮体癌、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫各1例の骨シンチ、X-CT、MRI、XPを対比して症例提示をした。

骨シンチisoメタを示す腎臓癌の1例の画像を表示する。
71歳 男性、右腎癌切除後 2年follow upの目的にて検査。
図1
図2
図3
3回目の骨シンチ全身像
病的 hotなし。
XCT
第12胸椎に骨溶解像。
MRI T1強調画像
第12胸椎に
低信号域。


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第196回定例研究会(1997.6)
骨シンチ検査の基礎講座

神奈川県立循環器呼吸器病センター
大島 正行


 下記の収集条件は、一つの基準案として記したものです。当然、各施設と異なるところがあると思います。異なる点は、なぜ、そのようになったかを充分理解し、検査を行ってください。その方が、より良い画像が得られ、患者の負担が軽減できるのであれば、それにこしたことわありません。しかし、そうでなければ、もう一度収集条件の再検討を行ってみたらいかがでしょう。

・全身シンチ
コリメータ収集マトリックスピクセルサイズ収集条件撮像方向
mm/Pixel(スキャンスピード)
LEHR256×10242.010〜15cm/minANT,POST
512×20481.0
・部分シンチ
コリメータ収集マトリックスピクセルサイズ収集条件撮像方向
mm/Pixel(カウントorタイム)
LEHR512×5120.6〜1.01000K(8分)異常部位多方向

核医学ディジタル画像の基準化案
−核医学ディジタル画像の基準化検討班報告− 日本放射線技術学会専門委員会より

・骨シンチを収集する前に !!
 まず、骨シンチ検査は、99mTc-HMDP or MDP 550〜740 MBq程度を患者に静注し、2〜3時間後より撮像します。
(注)ivした場所は必ず確認してください。もし、血管外に薬がもれ、骨と重なった場合、病変と間違う恐れがあります。
(注)撮像を始める5分前〜直前に必ず排尿をさせること。膀胱に尿が溜まっていると骨盤の病変が見えなくなってしまいます。「でない」「でたくない」という人もいますが、「検査の邪魔になりますので、でるだけでいいからトイレでだしてください。」とやさしく説明し、排尿してもらってください。(意外と出る人が多いです。)
(得)静注後2〜3時間待つ間に、水分をなるべく摂取してもらい、より多く排尿してもらうことにより、被爆線量が低減され、肋骨や大腿骨もより鮮明に見やすくなるという報告もありますので、一度、試して試してみてはいかがでしょう。

・全身シンチ
 体全体をくまなく検索するのが、全身シンチの目的ですので、両手をなるべく体に付けて寝てもらい、カメラを最も患者に近づけた状態で撮像します。
(得)肥った人で腕がはみ出してしまう様な場合は、大腿骨、骨盤に重ならない程度に手を臀部下に入れてもらうのも良い方法でしょう。
(注)近年は、体輪郭感知装置をつんだカメラも多数でまわり、カメラの近接も楽になりましたが、感度が良いので点滴台やタオルのはみだし等を感知し、カメラがはなれてしまうこともありますので、充分注意してください。

・全身シンチのフィルムへの撮像
 通常は、2濃度表示です。骨だけでなく皮膚面も観察できるように、全身カウント数、投与量を考慮しながら適度な濃度で撮像しましょう。
(得)ディスプレイの条件等は、核医学ディジタル画像の基準化案−核医学ディスプレイ技術の基準化を参照していただくと、基礎的なことから書いてありますので、良いと思います。
(注)老人や腎透析をしている人は、骨にあまり薬が集まらず、他に集まってしまうことがあります。その時は、ありのままをディスプレイしましょう。(無理に骨をだそうとすると、真っ黒な写真になってしまいます。)また、骨全体に薬がたくさん集まってしまうSuper Boneというのがあります。この時も、ありのままをディスプレイしましょう。(真っ黒にディスプレイします。)Super Boneは、投与量と全身カウント数で判断できるはずです。

・部分シンチ
 全身シンチにおいて、重なりがある部分(例えば胸骨と胸椎)、異常部位を多方向から撮像し、重なりは取り除き、異常部位は正面でとらえる。
(得)上顎に異常集積がある場合は、蝶形骨に浸潤している恐れがあるので、SPECTにて追加検査することをおすすめします。
(得)排尿がどうしてもままならず、膀胱に溜まった尿で骨盤の検索ができない場合はX線撮影法のマルチウス法の体位で骨盤を撮像すると膀胱と骨盤が分離し、検索しやすくなります。また、SPECTによる検索も有効です。
(注)骨盤付近の異常集積は、尿によるコンタミの場合があるので、充分注意すること。不確定な場合は、下着、ズボン等をずらして撮像するか、多方向より撮像する。(他の部位においても、コンタミには充分注意が必要です。)
以上、ごくごく簡単ではありますが、骨シンチ検査について思いのままつづらさせていただきました。今後、骨シンチ検査をおこなっていく上で、少しでも参考になれば幸いです。



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私のパソコン活用術(4)
それでもMac(事実の検証)

東海大学病院
藤田 昭


「Norton Utilitiesというソフトがベストセラーであるという事実が示すように、マックにはトラブルが付き物である。」こんな世間の意見、「Macはそろそろ危ないんじゃないか。」という昨今の出来事はあえて否定せず、現実として冷静に受け止めている、当院核医学部門唯一のマックユーザーの手記である。
 ワープロ系は以前から良く使用していたが、コンピュータというものを初めて手にしたのは、2年前に学会のスライド作りを、家でもできたらという動機でパフォーマ5320を購入したことにさかのぼる。いわゆるオールインワン系のパソコンで、ソフトも数多くバンドルされている万能マシンであった(当時のパフォーマの中では)。操作もほとんどマウスで行え、ワープロ、グラフィック等、初心者にとっては十分すぎる性能と操作性であり、年賀状やプリクラ作りからインターネットまでもこなす、まさにコンピュータの名の通りの仕事をしてくれる相棒となりました。  またメモリーの増設、プリンタ、スキャナ、MOドライブ、グラフィックボードと買いそろえ、現在でもCPUの速度以外は十分満足の行くマシンであるといえます。
 しかし、予期せぬエラーで突然終了してしまうソフト、ポインターが突然止まってしまうフリーズ状態の出現と、トラブル解決のための操作時間は、本業を上回ってしまうこともかなりありました。(夜になると、部屋から「クソっ!」とか、「あっ!」とかの声が良く聞こえてきました?)
 それでもこのような事故処理能力技術の向上が、愛着を生み、またそれらの知識が豊富になってきたこともまた事実です。
 最近良く使うソフトは、デジカメ画像やインターネットで取り込んだ画像を加工するPhoto shop4.0J、本や雑誌から文字を取り込むE-Typist97、データベース作りFile Maker pro3.0(研究中)にワープロはEGWORD7.0とEGBRIDGE8.0(この組み合わせは他のワープロの追随を許さない)とやっぱりNorton Utilities 3.5といったところです。  これからコンピュータを買う人!リンゴをかじって成長しよう!特にMac Userの方(Windows Userの方も歓迎)お便り待ってます。

東海大学病院 核医学 藤田 昭  E-Mail futta@mxk.meshnet.or.jp




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家庭サ−ビス(3)
警友総合病院
金谷 利久


 今年もビ−ルのおいしい季節がやってまいりました。仕事が終わってまっすぐ帰ろうと思ってもふと気が付くと駅を通り越してなじみの店へ。よく冷えたビ−ルがおいでおいでと手を振っている。これでボ−ナスがでたらさあ次の店へ・・・朝起きてもう酒は止めると思っても夕方には又同じことをやっている。
 たまの日曜日冷えたビ−ルじゃなくて冷たいお菓子でも作ってみませんか?毎日まじめに家事をしている嫁さんはゆっくりテレビでも見てもらって子供と一緒にシャ−ベットを作るのも面白いかもしれませんよ。(うちの子供はまだ小さいので手伝うというよりひっかきまわしてくれますが楽しそうにしているのでそれでいいかなっておもっています)

<シャ−ベット>
  材料  砂糖 150g 大さじ2
  ペパ−ミント 大さじ5
  卵白 1個
  レモン汁 1個分

1.鍋に水500ccと砂糖150gを加え煮溶かしシロップを作る
2.1の鍋ごと水で冷ましペパ−ミントとレモン汁を加える
3.卵白をつのが立つくらい泡立て砂糖大さじ2を加える
4.3の卵白に1のシロップを加え固く泡立てるとふんわりしてくる
5.4を平らな容器に入れ冷凍庫に入れる
6.表面が固まってきたらフォ−クで良く混ぜる
  これを3回繰り返す

 冷たいものを口にするなら健康的にビ−ルよりシャ−ベット!!と思っていたのにビ−ルを飲みながらつくってしまった・・・・・



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編集後記
東海大学病院 核医学
村上 剛


 今年の夏は、暑いのか寒いのかわからない天候でした。天候のせいではなく、私が年をとって四季を感じられなくなったのかもしれません。とにかく、朝晩はめっきり過ごしやすくなり、編集作業もやっとはかどるようになりました。
 神奈核News No.5は、定例研究会の原稿がたくさん集まり、かなりのボリュームになりました。また、毎度のことですが、発刊の遅れから、金谷さんの原稿の内容とは季節感が異なってしまいました。金谷さんには申しあけありませんが、この遅れはもう取り戻せないと、開き直ることにしました。



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