神奈核ニュース No.11(1999.6) 目次


平成10年度神奈核功労賞授賞式
常任幹事紹介
第207回定例研究会
ML-EM(maximum likelihood-expectation
maximization)法による画像再構成
島津製作所医用技術部 横井 孝司
第207回定例研究会
 MergedSPECT(全身SPECT)
−MIP表示を中心として−
東芝メディカル株式会社
営業本部営業技術部
久保田 雅博
第212回定例研究会
ガンマカメラの技術的問題点と
ユーザーが行うQC 
GE横河メディカル
システム(株)
渕上 丈弘
熱狂スタジアム(3)
 『神様がいなくなる日』 
横浜労災病院星 雅彦
お店紹介しようかい!(4)東海大学病院畠山 謙二


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平成10年度神奈核功労賞授賞式


 神奈川核医学研究会では、本会に多大な貢献をされた個人または団体に対して、神奈核功労賞を授与することになりました。



 平成10年度の受賞者は、「神奈核パンフレット英語版作成ワーキンググループ」に決まりました。グループのメンバーは、横浜港湾病院の工藤さん、横浜市大病院の炭崎さん、東芝病院の清田さん、県立循環器呼吸器病センターの伊藤さんの、4人の女性です。受賞理由は、国内では例を見ない英語版のパンフレットを作成したことと、その成果を世界大会に報告し絶大な評価を得たことによるものです。
 1999年4月の定例研究会で、授賞式が行われ、受賞者には、それぞれ、記念の盾と名前入りのボールペンが贈呈されました。
 じつは、この賞を設定することは、昨年度(平成10年度)の総幹事会で決まっていましたが、規定や細則などが決まっていませんでした。しかし、受賞者の功績の大きさから、幹事総意の元、詳細未定のまま授与することを決定するに至りました。



 今年からは、受賞者の選定方法や選定委員、記念品の内容やその財源などを明記した規定や細則を設けて、公開します。現在、その作業に取りかかり、次回の神奈核ニュース(No.12)に掲載する予定です。なお、功労賞に加え、奨励賞などの設定も検討しています。
 本賞の設定が、皆さんの研究や研究会活動の励みになることを期待しています。



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常任幹事紹介


渡辺 浩(横浜労災病院)


 今年は、神奈核創立30周年記念大会(西暦1969年7月創立)、第5回海外学術交流など大きな事業がめじろ押しです。また、インターネットホームページを本格的に開設致しますので、是非ご覧頂くと共に、皆様に色々と活用して頂ければと考えております。今年も忙しい1年になりそうですが、洗練された常任幹事の方々のお力を借りて、研究会発展のため頑張りたいと思いますので会員の皆様のご支援とご協力をお願いします。




村上 剛(東海大学病院 )



 私が核医学に手を染めてから、かれこれ15年になります。近頃、核医学を長期にわたって経験してきた方々が、偉くなって管理職となり、核医学業務から離れてきています。気がついてみますと、私なんかが一番古い人間になってしまいました。まあ、どんどん新しい人たちに変わっていくのは、悪いことではないのでしょう。若い方には、積極的に会に参加してくださるようお願いします。神奈核では、編集担当をしています。原稿依頼があったら、できるだけ早く書いてくださるよう、みなさまにお願いします。




菊池 敬(北里大学病院)

 放射線技師になって、この春で15年目を迎えました。当院での核医学専従もマル10年を過ぎ、この神奈核の常任幹事になってから5,6年は経ったでしょうか。昨年度からは学術担当幹事として、定例研究会のテーマや講師の先生の選定に頭を悩ましています。これからは尚一層の内容の充実を図るため、渡辺代表幹事をはじめ幹事、常任幹事の協力のもとに頑張ります。また、取り上げてもらいたいテーマ、興味のあるテーマがございましたら、是非、どちらの幹事でも結構ですのでお知られ下さい。




金谷 利久(けいゆう病院)


 親睦行事を佐々木氏・荒田氏と共に担当している金谷です。神奈核の親睦会は納涼会、忘年会、釣り会が有りますが今年から麻雀大会を開催する予定です。(楽しみにしていて下さい)宿泊の忘年会を毎回箱根山水で行っていますが、どこか良い宿泊施設(宿泊+食事で1万円位)御存知の方いらしたら教えて下さい。又こういう親睦会を行って欲しい等希望ありましたら幹事に声をかけて下さい。たくさんの人が参加して楽しんでもらうような親睦会になるよう頑張りますので宜しくお願いいたします。




佐々木 俊光(神奈川県立がんセンター)


 私が放射線第3科に配属になった平成5年以来,次々に優秀な先輩方が転勤になり気がついてみると1番古株になっていました。そんなとき『がんセンターより神奈核常任幹事を出してください。』と私に白羽の矢が立ち,平成10年度よりお手伝いをしています。参加する側から企画運営する側になり,頭を使うことが多く勉強する機会が増えました。本年度も非力ながらお手伝いをさせていただきますのでよろしくお願いいたします。


工藤 博子(横浜市立港湾病院)


 港湾病院の工藤博子と申します。昨年4月より常任幹事を仰せつかり、2年目に入ります。核医学部門を担当してまだ日も浅く、わからないことが多いのですが、先輩方に助けていただきながら頑張っていきたいと思います。なお、今年の担当は海外学術交流の企画となっております。なるべく皆さんが参加しやすい内容となるよう努力するつもりです。よろしくご指導のほどお願い致します。

小野 欽也(川崎市立川崎病院)


 神奈核ではホームページのワーキンググループを担当しております。まだ、工事中のページが多く完全なものではありませんが、少しでも多くの皆様に見てもらえるようがんばっておりますので、是非一度ご覧になってみてください。また、皆さんのご意見をいただくことで、より良いものになっていくと思いますので、ご意見・ご要望等ございましたら、どんどんお寄せください。よろしくお願いいたします。




荒田 光俊(横浜栄共済病院)


 昨年から常任幹事の仲間入りをさせていただきました。当院は平成7年3月から核医学部門を開設しまして今期で5年目を迎えます。経験豊富な常任幹事の方々に交じっていろいろ勉強させていただいています。本年度は麻雀大会の開催の担当を受けましたので、我こそはと思う方はどうぞ振るって御参加ください。でもお手柔らかに。




木村 文治(横浜労災病院)


 この度、神奈川核医学研究会の一員として仲間入りさせて頂くことになりました。核医学に携わる方々の、交流媒体となっている神奈川核医学研究会に参加させて頂くことにより、色々なことを学ばせて頂きたいと思います。また、会員の方々との交流も、とても楽しみにしております。私自身、核医学に携わるのは初めてのことで、判らないことばかりですが、少しでも会のお役にたてればと思っております。戸惑うことが多いかと思いますが御指導の程、宜しくお願いします。




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第207回定例研究会
 ML-EM(maximum likelihood-
 expectation maximization)法による画像再構成

島津製作所医用技術部    横井 孝司
昭和大学藤ケ丘病院放射線科 篠原 広行


I.ML-EM再構成とは?
 最尤推定-期待値最大化(ML-EM:maximum likelihood-expectation maximization)再構成法は従来のフィルター補正逆投影(FBP)法とは全く違った理論から成り立っている。ML-EM法を一言で言えば、「統計学的手法によってRI分布を推定する方法」と言える。最尤(ML)推定と期待値最大化(EM)法とを組み合わせて未知数を求める手法はDempsterら[1]によって発表されたが、これをPET画像再構成に応用したのはSheppら[2]、Langeら[3]が最初である。当初は膨大な計算時間が掛かるという理由で単なるアイデアの一つに過ぎなかったが、ここ数年のコンピュータ性能の向上により一躍脚光を浴びるようになった。同時にHudsonら[4]がOS-EM (ordered subsets ML-EM、オゼムと呼ぶ) 法という高速化アルゴリズムを開発したことによって臨床に使用できる状況になってきた。
 ML-EM法の主な利点としては、1)再構成値が負にならない、2)低カウント領域でのS/Nが良い、3)測定系で起こりうる物理現象を織り込んでおくことによって様々な補正ができるなどがある。3番目の理由から吸収補正、散乱線補正、分解能(コリメータのボケ)補正などを組み込んだSPECT画像再構成法が提案されている。統計学的な理論背景については詳細な解説文[5]が出ているのでそれに譲るとして、ここでは主にML-EM法の柔軟性をいかした実際の応用例を中心に概説する。

II.ML-EM法による画像再構成の基礎
2-1.ML-EM法
まず、ML-EM法による画像再構成はFig.1に示すような式で表される。λjはある画素jのRI濃度、yiは検出器iに入射した投影カウント、Cijは画素jから出た光子(γ線)が検出器iに到達する割合(確率)である。 yiが実際に測定される投影データである。この式は画素jに着目したRI推定の式であるので、再構成を行うにはすべての画素についてこの演算を行う必要がある。計算ステップを以下に示す。
(1) 検出確率Cijを計算する (最初に一回だけ計算すればよい)。
(2) 初期画像 を仮定する。
(3) 検出器iから画素jに対する逆投影(back-projection)を計算する。
(4) 画素j を通り検出器i に入る光子の投影(forward-projection)を計算する。
(5) ステップ(3)(4)をすべての投影角度について計算し、両者の比を取って加算する。
(6) 全確率 で規格化する。
(7) 以上の計算値を初期画像の画素j に掛け算して更新画像 を作成する。
(8) 次の画素(j+1)に移ってステップ(3)に戻る。すべての画素の計算が終わったら更新画像を初期画像としてステップ(3)に戻る。
 以上の計算ループを繰り返すことによってλはRI分布画像に近づいていく。計算ループの打ち切りに関しては明確なルールは存在しないので、実験的(経験的)に行っているのが現状である。また初期値としては「正の値であること」という制限はあるが、一様分布を仮定しておけば特に問題はない。

2-2.OS-EM法
 OS-EM法は、ML-EM法の計算手順のステップ(5)において、すべての角度のデータを使って計算するのではなく、投影データをいくつかの組(subset)に分割しておき、このsubset内だけで加算計算を行う方法である。手順を以下に示す。
(1) 検出確率Cijを計算する(最初に一回だけ計算すればよい)。
(2) 初期画像 を仮定する。
(3) 検出器iから画素jに対する逆投影(back-projection)を計算する。
(4) 画素jを通り検出器iに入る光子の投影(forward-projection)を計算する。
(5) ステップ(3)(4)をsubsetに属する角度のみで計算し、両者の比を取って加算する。
(6) 全確率 で規格化する(ただし、nはsubset内のデータ数)。
(7) 以上の計算値を初期画像の画素j に掛け算して更新画像 を作成する。
(8) 次の画素(j+1)に移ってステップ(3)に戻る。すべての画素の計算が終わったら更新画像を初期画像として、次のsubsetに移りステップ(3)に戻る。すべてのsubsetの計算が終わったら、同様に更新画像を初期画像としてステップ(3)に戻る。
 subsetに分けることによって更新する回数が多くなり、結果として速く収束するのである。 ただし、すべての角度データを使って計算しないので、subsetの作り方によって必ずしも収束するとは限らない。このsubsetの数や使用する順序などは特に決まったルールはないが、なるべく離れた角度の投影データ毎にsubsetを構成するようにしている。これをFig.2に示す。subsetが1の場合は、一度にすべての角度の投影データを使うことになるので、これは元々のML-EM法と一致する。現在では、EM法といえばほとんどの場合、OS-EM法と考えてもよい。
2-3.検出確率Cij
 検出確率Cijに実際の測定系で起こりうる物理現象を織り込んでおけば、この影響を考慮して画像再構成することができる。これがML-EM(OS-EM)法の柔軟性を高くしている理由である。Cijの計算で考慮すべき項目としては、大体、次のようなものがある。
(1) 画素jと検出器iとの位置関係から決定される幾何学的な面積割合
(2) 画素jから出た光子が検出器iに到達するまでの吸収の割合
(3) コリメータの有限な開孔径によって画素jから出た光子が実質的に広がりを持つので、それも考慮した割合これをFig.3、4に示す。項目2、3を考慮に入れるとそれぞれ吸収補正、分解能(コリメータのボケ)補正ができる。このようにあらかじめ分かる情報をアルゴリズムに組み込んでいくことによってML-EM再構成法の応用範囲が広がっていく。

III.応用例
3-1.S/Nの向上
 EM法の特徴として低カウント領域でのS/Nが良いことは最初に述べた。 これを検証するためにF-18 FDGとPETを用いたファントム実験を行った。収集時間を1分と10分の2種類とし、FBP法とOS-EM法で画像再構成したものをFig.5に示す。10分収集のデータをFBP法で再構成したものと、1分収集のデータをOS-EM法で再構成したものとで、ほぼ同等のS/Nであることがわかる。
3-2.吸収補正
 吸収補正は先に述べたように検出確率Cijに光子の減衰を考慮して計算しておけばできる。このためには吸収マップが必要となるので、このために外部線源を使ったトランスミッションCT(TCT)測定が行われる。
 濃度直線性ファントム(Tc-99m)を使って吸収補正の効果を検証した実験結果をFig.6に示す。 吸収補正なしでは中心部においてへこみが見られるのが、吸収補正ありではほぼフラットになった。ただし、均一吸収体であるために、どちらの場合でも濃度直線性に関しては特に違いはなかった。
3-3.吸収・散乱線同時補正
 吸収補正のみを行っても、心筋SPECT測定では下壁部において過補正になる場合がある。この原因として散乱線の影響が考えられている。本来、散乱確率は吸収マップがわかれば求められるので、これを考慮してCijを計算してやれば良い。しかし、この方法は計算が複雑になり、まだ実用化されていない。一方、直接的に散乱成分Siを測定して、基本式に組み込む方法が考えられる。これをFig.7に示す。すなわち、分母にあらかじめ測定された散乱成分Siを検出器の持っているオフセットとして加えておくのである。Siはサブウインドウを設けて近似的に求める。
 Fig.7の式は、元々、PETにおいて偶発同時計数を補正するのに使われた式で、測定されたプロジェクションデータに何らかのオフセットを持っている場合、これを取り除くのに利用できる。この式の利点はサブトラクションすることなしにオフセットが取り除けるので、投影データをあらかじめサブトラクションする方法に比べてS/Nが良いことが報告されている[6]。
この方法を検証するために、まずFig.8に示すような円錐ファントムで実験を行った。 このようなファントムを用いることによって吸収/散乱体の厚さの違いによる補正効果を評価できる。中心にTl-201のライン線源をセットし、SPECT測定後、再構成画像の最大カウントとFWTMを各スライス位置で求めた。TCT測定はTc-99mで行った。結果をFig.9に示す。最大カウントで評価すると、吸収補正さえしていれば散乱線補正の有無には関係なく一定値を示した。
一方、FWTMで評価すると、散乱線補正さえしていれば吸収補正の有無には関係なく一定値を示した。どちらの場合でも一定値を示したのは、吸収/散乱線補正の両方を行ったものだけであった。  次に心筋ファントムを使用して行った実験結果をFig.10に示す[6]。心筋部分とバックグラウンドにはTl-201を入れ、TCT測定はTc-99mで行った。再構成画像からわかるように、吸収/散乱同時補正を行った時が、もっともコントラストが向上した。Fig.11にプロフィールカーブを示す。散乱線補正ありの場合は、内腔部分でカウントがほぼ0になっていることがわかる。
3-4.分解能補正
 SPECTではコリメータを使ってγ線の入射方向を制限する。コリメータの穴は有限な広がりを持つので、その分解能はコリメータ表面から線源の距離に依存し、距離が遠くなれば悪くなる。 この特性は点線源の距離を変えて測定し、その点応答関数のFWHMを測定することによって知ることができる。実質的にはコリメータとシンチレータの両方による点応答関数を測定していることになる。これを使って広がりを考慮して検出確率Cijを計算すれば、分解能の補正が行えることになる(Fig.4)。最近では、F-18 FDGを511keVコリメータで測定したデータに適用して、分解能を向上させた報告もある[7]。
3-5.Tc-99m心筋SPECTへの応用
 最近、心筋Tc製剤(MIBI、テトロホスミン)が臨床に使われるようになった。Tc製剤の特徴は、肝臓、胆道など心筋以外の臓器に高集積することである。 FBP法で再構成すると、時としてこの高集積部分からのストリーク状のアーチファクトが現れることがある。一方、ML-EM(OS-EM)法で再構成すればこのアーチファクトが軽減できる。 Fig.12にFBP法とOS-EM法で再構成した心筋SPECT画像を示す。OS-EM法ではアーチファクトがなくなっていることがわかる。
3-6.全身PETへの応用
 PETの臨床で最も有用であるといわれているのが、F-18 FDGによる腫瘍検出である。このために最近のPETでは、ベッドを移動させて全身スキャンを行える装置が普通である。このようにして測定されたデータをOS-EM法で画像再構成し、全身のコロナル像に再構築しなおしたものをFig.13に示す。腫瘍の有無や転移などが鮮明に観察できる。

IV.今後の動向
 ML-EM(OS-EM)法の応用範囲は、検出確率にCijに先見情報を巧妙に組み込むことによって広がっていく。 現在では、MRI画像の情報を使って分解能を上げる方法などが開発されている。EM法が従来のFBP法に取って替わるかどうかは現時点では判断できないが、十分に可能性があると考えられる。今後は画質以外にも、定量性や収束性に関しての基礎的な検証を行っていかなければならないと考えている。
 なお、PETのデータに関しては群馬大学病院、東北大学サイクロトロンアイソトープセンター殿に提供していただきました。この場をお借りしてお礼申し上げます。

参考文献
1) Dempster AP, et al.: Maximum likelihood from incomplete data via the EM algorithm. J R Stat Soc Series B39:1-38, 1977
2) Shepp LA and Vardi Y: Maximum likelihood reconstruction for emission tomography. IEEE Trans Med Imaging MI-1:113-122, 1982
3) Lange K and Carson R: EM reconstruction algorithms for emission and transmission tomography. J Comput Assist Tomogr 8:306-316,1984
4) Hudson HM and Larkin RS: Accelerated image reconstruction using ordered subsets of projection data. IEEE Trans Med Imaging MI-13: 601-609, 1994
5) 篠原広行、國安芳夫、橋本雄幸他、画像再構成法ML-EMアルゴリズムの概要と意義  映像情報(M)、1118-1124, 1998
6) 松岡 伸、篠原広行、山本智朗他、OS-EMアルゴリズムによるTl-201心筋血流SPECTの散乱・吸収補正 日医放会誌 in press
7) Zeng GL et al.: Iterative reconstruction of fluorine-18 SPECT using geometric point response correction. J Nucl Med 39:124-130, 1998




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第207回定例研究会
 MergedSPECT(全身SPECT)
 −MIP表示を中心として−   

東芝メディカル株式会社 
営業本部営業技術部 久保田 雅博


 MergedSPECTは検出器の回転と寝台移動を繰り返すことにより全身のSPECTデータを収集する手法である。Planarデータに比べ情報量の多いSPECTデータを収集することにより立体的に腫瘍部位を把握することが可能となり診断の向上につながる。東芝ではこのMergedSPECTデータをMIP(Maximum Intensity Projectionの略)処理することによりさらに明瞭な高集積部位の表示を実現している。  ここではこのMergedSPECTとMIP表示の原理、収集処理条件を述べ、さらに臨床データを提示する。

 近年腫瘍検査においてもSPECT収集することが重要であると言われている。学会等でもPlanar像では見えない腫瘍がSPECT像で確認できるという例が多く報告されている。このことを模式的に表した 図をFig.1に示す。図中のTransaxial Imageが被験者のある断面のRI分布を表している。向かって右に検出器を配置してデータを収集するとそれぞれの行の数字が積算された形でPlanar Imageが撮像される。ここで注目すべきなのは高集積部とその近傍の数字、つまりカウント値の差である。Transaxial像においては高集積部が"10"、近傍が"2"〜"4"であるのに対してPlanar Imageでは高集積部が"18"、近傍が"15"となっている。断層像ではコントラストが高いにもかかわらずPlanar像ではコントラストが低く表現されてしまっているのがわかる。このことからSPECT検査が重要であると言われている。

 次にMergedSPECTの原理をFig.2に示す。マトリクス128×128で頭部から順番にSPECT収集を行なっていく。収集終了後、寝台を検出器の1有効視野分移動し、再びSPECT収集を行なう。これを数回繰り返すことで全身のSPECTデータを収集するのが原理である。収集終了後にこれらのデータを解析装置にてつなげる(merge)ことで全身SPECT像を表示する。このデータから再構成、断面変換、さらにMIP処理を施し診断画像を作成することができる。例をFig.3,4に示す。
 MergedSPECT収集条件および処理条件を以下にまとめる。



   ・マトリクスサイズ   128×128
 ・収集拡大率      ×1.0
 ・Step/Continuous   Continuous
 ・円軌道/近接軌道   自動近接機構がある場合は近接軌道
 ・サンプリング角度   6°以下
 ・収集時間       5分/スキャン程度
 ・その他        ボディラップ等、
              何らかの方法で患者さんを固定
 ・前処理フィルタ    Butterworth filter
   カットオフ周波数  0.5 cycles/cm 以上
 ・再構成フィルタ    Ramp filter
 ・スライス厚      1 pixel/slice
 ・吸収補正       なし

収集時間は1スキャン5分、つまり全身の撮像に30分弱かかる。しかし必ずしも全身を撮像しなければならないのではなく、関心部とその前後を合わせた3スキャン分を撮像するなど任意にスキャンする部分を指定できる。
 また、全身のSPECT像を撮像し、FBP(Filtered Back Projection)にて再構成を行なうと集積の高い膀胱部で放射状のアーティファクトが強くでる。これはFBPの原理上必ず発生する。この特有のアーティファクトが原理的に発生しない手法として逐次近似法がある。コンピュータの処理能力の向上により現実的な手法として注目を浴びているが、この高速版であるOS-EM法とFBPで処理した画像の比較をFig.5に示す。OS-EM法では高集積にともなう放射状アーティファクトが全く出ていないのが見て取れる。

     


 CT,MRなどで用いられているMIP処理であるが核医学においても有用である。再構成されたTransaxial像から逆に投影像を作成するのだが、その際投影線上の最大値をピクセル値とするのがMaximum Intensity Projectionである。
 腫瘍は基本的にHot像である。画像としてみた場合腫瘍部位は画素値が高くなる。MIP処理を行なうことはこの画素値の高い部分を強調して表示、つまり核医学で言う高集積部分を強調して表示することになる(Fig.6)。またPlanar像では3次元的な位置の把握がしにくい。MIP表示は方向を変えて表示できるので立体的に腫瘍の位置が把握できるという利点もある。最初に述べたSPECT像が高いコントラストで腫瘍を表示できることと合わせて診断能の向上に結びつくと考える。


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第212回定例研究会
 ガンマカメラの技術的問題点とユーザーが行うQC 

GE横河メディカルシステム(株)
渕上 丈弘


 近年はほとんどのガンマカメラがSPECT可能な装置になってきております。そこで、SPECTの問題点を中心にガンマカメラの技術的問題点と、ユーザーが行うQCについてメーカーの立場から記述させていただくことにします。
1.カメラ固有の問題点
 以下の3点についてそれぞれ補正ファイルが必要になることがわかるかと思います。補足ですが、その他にも検出器の数え落しの問題や、オーバーフローといった補正等で解決できないハード的な問題もあります。

  カメラ基本性能
要因
直線性
フォトマルの反応がフォトマル中心部と辺縁部とで異なる(フォトマル発光位置による変動)
エネルギー
視野内の各位置におけるガンマ線エネルギーに対する反応にバラツキがある
均一性
物理的にコリメータの隔壁やホール間隔の不揃い、ホール角度の不揃いがある

2.SPECT装置の問題点

 
要因
アーチファクト例
QC
回転中心(電気的・機械的)のズレ
SPECT時の画像のひずみ、分解能の劣化
点線源のSPECT収集・評価
総合均一性がとれていない
ホット又はコールドのリングアーチファクト
フラッドイメージの収集・評価

3.その他SPECT画像に及ぼす要因

 
要因
対応策
体内での吸収・散乱
得られた画像が、体内放射能濃度により近くなるように工夫します
収集中の体動
収集中に細心の注意し、検査方法を工夫することで回避を心がけます
アップワードクリープ
患者さんの呼吸が安定してから収集を開始するようにすることで回避できます
ガンマカーブの選択
カラーコピー、イメージャー、処理画像ごとに調整・カーブの使い分けを行うようにします
SPECT平均カウント
収集マトリクスに合ったカウントを得られる様な収集を心がけるようにします
コリメータの半影によるボケ
SPECTには高分解能型コリメータを選択するようにし、画像の歪みを抑え、深部の分解能を上げるようにします
目的臓器が回転中心にない
極力目的臓器を回転中心に置くように心がけ、歪みのない画像を得るようにします
心筋SPECT時の胆嚢への高集積
最近では逐次近時法(OSEM法・MLEM法)による画像再構成で処理ができます

4.ユーザーが行うQC
<目的>
 ユーザーが行うQCとは調整ではなく点検であります。臨床画像の問題を最初に発見するのは現場の先生方であるのは言うまでもありません。先生方の毎日の御忙しい業務のなかで、フラッドファントム・バーファントム等でより簡易的に定期的に行うことが大切ではないかと思います。詳しい方法はアイソトープ協会の勧告を参照していただきたいと思います。
<最低限必要なCheck項目>
 毎日−使用核種ごとのエネルギーピーク
 毎週−主な使用核種を用いた均一性
 毎月−主な使用核種を用いた固有分解能、回転中心

 カメラ側の調整はわれわれメーカーの役目です。よりよい画像を得る為に、点検の方を日頃から現場の先生の方で気にして頂ければ幸いです。


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熱狂スタジアム(3)
 『神様がいなくなる日』

横浜労災病院
星 雅彦


皆さんは、"NBA"という名前を御存じであろうか?。新聞、テレビで一度は耳にしたことはあると思うが、この投稿を書いている日の前日、1月12日全世界に衝撃の発表があった!!。(とはいっても一部だけかも知れないが・・・)
 ついに、あのマイケル・ジョーダンが   …引退を発表した…。
バスケットに青春の日々を費やした人だれもが"いつか自分もあんなプレーをしたい!"と思うはず(絶対無理だけど・・・)。

 野球少年が、松井や、清原や、高橋に憧れるように、自分もジョーダンに憧れた。幸運にも、私のバスケット人生はジョーダンと共に歩んで来たといってもいい。自分がバスケットを始めたのは中学1年の時、でその翌年にジョーダンはプロデビューをした。
 当初は今のようにテレビで試合が放送されることはなく、あまり存在が知らていなかったが、バスケの人気が出始めると、テレビの深夜番組ではジョーダンの試合は必ず放送されようになった。当然のことながら"親にエッチな番組を見ていると勘違いされているんだろうな〜"と思いつつも、幾度夜更かしをしたことか。
 高校生になって、チームメイトと、よくジョーダンのプレーをまねしようと練習していた時期もあった。(結局できなかったけど・・・)その甲斐があってかどうかは定かではないが、卒業までに好成績を残すことができた。(詳しくは語らないが)
現在でも週に一度、練習はしている。
もちろんシューズは"エアージョーダン!!"
ちょいとこの場を借りて宣伝・・・
"我が労災病院バスケ部は部員&対戦相手を募集中!!"
え〜ジョーダンの話題に戻して、知らない人のために軽くデータのおさらいをしましょう。1984年、ドラフト3位で指名、デビュー戦は16得点をあげた。
自己最多得点は1試合69得点、その後94年に一度引退し、野球に転向、しかし、翌95年には復帰し96年〜98年V3を達成した。ちなみに、ジョーダンが神といわれるようになったのは、86年のプレーオフの相手、ボストンセルティクスのラリーバードが 『ジョーダンの姿をした神がプレーした』と言ったからだそうだ。それで一体幾ら給料もらっているのかと言うと、年収約100億円だってよ〜。今後の活動はどうするのか、巷の噂では、プロゴルファーに転向するのではなどといわれているが、自分個人の意見はまたバスケをしてほしいと思う今日このごろである。


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お店紹介しようかい!(4)
東海大学病院
畠山 謙二


 日本の都市は、駅を降りて左側の地域から発達したといわれていますが、ここ愛甲石田駅(小田急線)もまさにそのとおりで、地図を見て判りますように、北口から出ると有名なケンタキーフライドチキン、マクドナルド、牛丼の吉野屋、有名ではありませんが「とりの巣」があります。名前の由来は、国道246からお店に向かって左側が「おんどり」右側が「めんどり」奥にあるのが「とりの巣」3店とも同じ店(経営)なので、全部合わせて「とりの巣」だと私は勝手に決めています。今回のお店紹介は居酒屋「とりの巣」です。
  お店の大きな特徴は、とにかくメニューが豊富な事、壁全体にメニューが貼ってあり、その内容も豊富で鍋、刺身、煮物、焼き魚、サラダに中華料理などの何処にでもあるようなものから、各地方の名産物まであります。またどこの名産か判らないような、トド肉のステーキやワニの唐揚げ、クジラ、そして、ラーメン、寿司、焼き肉(七輪で焼きながら…)など、とにかくメニューは豊富です。

 それでは、私達(核医学の人々)の「とりの巣」利用法をお教えいたします。このお店は、愛甲石田駅にありますから東海大学病院(伊勢原駅)の近くではありません、にもかかわらず利用するのは、地図にも書きましたが近くにスライド現像所(AM.9:00〜PM8:00)があるからです。スライドは1時間で仕上がりますので、PM7:00に出せばPM8:00にはできあがります、その後訂正があれば直ちに撮り直す事もできます。皆さんも経験があると思いますが、なぜかいつもギリギリになってしまうのですョネ!という訳でPM 7:00前にスライドを現像に出して、1時間ただ待つのも長いので、いざ、居酒屋へとなります。そして、一人では淋しいので、核医学のメンバー全員でいきます、みなさん優しいのです(?)。現像している間、楽しくお酒を飲んで語って過ごしPM8:00に取りに行きます。しかし、ついつい語りすぎて取りに行くことを忘れる事もあります。前回は、「スライドを出すならこの日にしてくれ、この日が全員予定がないから、この日以外はだめだ」。エッ!発表まで、まだひにちが一週間もあるけれど、これって飲み会にスライドの現像を合わすということか、まッいいか!お上(?)の命令だし、というわけで、その日の「スライド待ち飲み会」も無事終わり、スライドは、もう少し手を加えて明日また現像することになりました。
 翌日、「今日スライド現像にいきます」またとりの巣に行きましょう!!声をかけても無視して仕事を続けている核医学の人々でした(頭、痛そう〜)。その夜、ひとり寂しく現像に行ったのはいうまでもありません。なにかの機会にこちらの方に来られましたら是非「とりの巣」に寄ってって下さい、また核医学の人々に誘いの電話もお忘れなく。



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