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| 第207回定例研究会 MergedSPECT(全身SPECT) −MIP表示を中心として− | 東芝メディカル株式会社 営業本部営業技術部 | 久保田 雅博 | |
| 第212回定例研究会 ガンマカメラの技術的問題点と ユーザーが行うQC | GE横河メディカル システム(株) | 渕上 丈弘 | |
| 熱狂スタジアム(3) 『神様がいなくなる日』 | 横浜労災病院 | 星 雅彦 | |
| お店紹介しようかい!(4) | 東海大学病院 | 畠山 謙二 | |
ML-EM法の主な利点としては、1)再構成値が負にならない、2)低カウント領域でのS/Nが良い、3)測定系で起こりうる物理現象を織り込んでおくことによって様々な補正ができるなどがある。3番目の理由から吸収補正、散乱線補正、分解能(コリメータのボケ)補正などを組み込んだSPECT画像再構成法が提案されている。統計学的な理論背景については詳細な解説文[5]が出ているのでそれに譲るとして、ここでは主にML-EM法の柔軟性をいかした実際の応用例を中心に概説する。
yiが実際に測定される投影データである。この式は画素jに着目したRI推定の式であるので、再構成を行うにはすべての画素についてこの演算を行う必要がある。計算ステップを以下に示す。
以上の計算ループを繰り返すことによってλはRI分布画像に近づいていく。計算ループの打ち切りに関しては明確なルールは存在しないので、実験的(経験的)に行っているのが現状である。また初期値としては「正の値であること」という制限はあるが、一様分布を仮定しておけば特に問題はない。
(1) 検出確率Cijを計算する(最初に一回だけ計算すればよい)。
subsetに分けることによって更新する回数が多くなり、結果として速く収束するのである。
ただし、すべての角度データを使って計算しないので、subsetの作り方によって必ずしも収束するとは限らない。このsubsetの数や使用する順序などは特に決まったルールはないが、なるべく離れた角度の投影データ毎にsubsetを構成するようにしている。これをFig.2に示す。subsetが1の場合は、一度にすべての角度の投影データを使うことになるので、これは元々のML-EM法と一致する。現在では、EM法といえばほとんどの場合、OS-EM法と考えてもよい。
(1) 画素jと検出器iとの位置関係から決定される幾何学的な面積割合
EM法の特徴として低カウント領域でのS/Nが良いことは最初に述べた。
これを検証するためにF-18 FDGとPETを用いたファントム実験を行った。収集時間を1分と10分の2種類とし、FBP法とOS-EM法で画像再構成したものをFig.5に示す。10分収集のデータをFBP法で再構成したものと、1分収集のデータをOS-EM法で再構成したものとで、ほぼ同等のS/Nであることがわかる。
吸収補正なしでは中心部においてへこみが見られるのが、吸収補正ありではほぼフラットになった。ただし、均一吸収体であるために、どちらの場合でも濃度直線性に関しては特に違いはなかった。
Fig.7の式は、元々、PETにおいて偶発同時計数を補正するのに使われた式で、測定されたプロジェクションデータに何らかのオフセットを持っている場合、これを取り除くのに利用できる。この式の利点はサブトラクションすることなしにオフセットが取り除けるので、投影データをあらかじめサブトラクションする方法に比べてS/Nが良いことが報告されている[6]。
一方、FWTMで評価すると、散乱線補正さえしていれば吸収補正の有無には関係なく一定値を示した。どちらの場合でも一定値を示したのは、吸収/散乱線補正の両方を行ったものだけであった。
次に心筋ファントムを使用して行った実験結果をFig.10に示す[6]。心筋部分とバックグラウンドにはTl-201を入れ、TCT測定はTc-99mで行った。再構成画像からわかるように、吸収/散乱同時補正を行った時が、もっともコントラストが向上した。Fig.11にプロフィールカーブを示す。散乱線補正ありの場合は、内腔部分でカウントがほぼ0になっていることがわかる。
この特性は点線源の距離を変えて測定し、その点応答関数のFWHMを測定することによって知ることができる。実質的にはコリメータとシンチレータの両方による点応答関数を測定していることになる。これを使って広がりを考慮して検出確率Cijを計算すれば、分解能の補正が行えることになる(Fig.4)。最近では、F-18 FDGを511keVコリメータで測定したデータに適用して、分解能を向上させた報告もある[7]。
Fig.12にFBP法とOS-EM法で再構成した心筋SPECT画像を示す。OS-EM法ではアーチファクトがなくなっていることがわかる。
現在では、MRI画像の情報を使って分解能を上げる方法などが開発されている。EM法が従来のFBP法に取って替わるかどうかは現時点では判断できないが、十分に可能性があると考えられる。今後は画質以外にも、定量性や収束性に関しての基礎的な検証を行っていかなければならないと考えている。


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