特別講演 「これからの腫瘍核医学」 ― FDG-PETによる腫瘍診断を中心に ― 横浜市立大学医学部放射線医学講座 教授 井上 登美夫 PET(ポジトロンエミッショントモグラフィ)は、ブドウ糖代謝を反映するFDG(フルオロデオキシグルコース)が特にがんの診断に有効であることから、近年その臨床応用が急速に進められつつある。わが国でも1980年代後半では5〜6施設しかなかったPET 施設がこの数年の間に急速に増えようとしている。米国では1998年に一部のがんに対するFDGの公的保険の適用が認められてから、急速にその検査件数が増している。FDG-PETは悪性腫瘍に関しては、所属リンパ節・遠隔転移などのがんの進展度の診断、治療効果判定、治療後再発、予後予測などに利用できる。特に肺がん、大腸がん、頭頚部がん、悪性リンパ腫、悪性メラノーマなどに有用とされている。この4月から、わが国でもてんかん、虚血性心疾患とともに10の悪性腫瘍に対する保険適応が認められ、これからのわが国の腫瘍核医学を大きくかえていくものと予想される。しかし、FDGが万能なわけではなく既に急性炎症巣に対する擬陽性などの臨床上の限界も指摘されている。 FDGの臨床の場での定着とともに既に次のPET製剤の研究開発が行われている。アミノ酸製剤、チミジン製剤などの腫瘍代謝PET製剤がFDGの次の製剤として期待されるが、さらに腫瘍血管新生、アポトーシス、がん遺伝子発現の画像化などより先端的な薬剤の開発が進めれている。 一方装置の面では、PETとCTを合体したPET/CTが開発されその臨床応用が期待され注目されている。それとともにより安価でSPECTも撮像できるハイブリッド型のPETカメラも普及し始めている。 講演ではFDG-PETの基本的検査原理と臨床的適応について概説し、新しい薬剤、PET/CT、ハイブリッドガンマカメラに臨床例を中心に紹介する。 |
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