渡辺(横浜労災)さんより、日本の今後の核医学ひいては放射線診療について、日米両国の健康保険制度を踏まえ、意見を述べてもらいたい旨の連絡を頂きました。日本の健康保険制度改正に伴う核医学あるいは放射線診療へのインパクトは、今後極めて慎重に協議されるべき問題であると思います。まず日米の基本的な医療の相違は、その態度にあり、日本では患者本位の姿勢が医療の中心となるのに対して、米国では医療出費が医療システムを考える中心的因子となっているのが残念ながら現状です。しかし、近年の日本の経済状況の悪化などより、日本医療も、医療出費を無視することができなくなってきたのが現状であり、これが医療保険制度の改革を促そうとする一つの大きな原因となっています。今後の日本の医療には、いかに患者本位の日本医療の基本的姿勢を保ちながら、コスト的に最適な医療を行っていくかという、難しい問題が課されています。このような課題を、医療関係者の一人一人が自ら率先して議論し、その解決法を行政に積極的に提案していくことは、今後核医学あるいは放射線診療を適切な方向に導く上で、大変に重要な作業となります。米国の医療制度をそのまま輸入することは、その医療システムの根本的な違いから考えても難しいものがあり、また日本の医療の良い面を失う恐れがあるため賛成できませんが、一方で、米国の医療トレーニング法や最適な診断システムを学ぶことは、最適な医療を行う上で、大変に参考になると考えます。日本の医療状況に課された厳しい現実を認識した上で、日本医療の将来をみんなで考えていく上で、今後、このようにホームページ(インターネット)を活用し、議論が活発に行われることを期待します。私もその状況を注意深く拝見させて頂き、またの機会には、時間の許す限り、意見を述べたいと思っております。

                    ミシガン大学核医学科、教授、蓑島 聡

Satoshi Minoshima, MD,PhD

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